2020.12.20

早大の大物ルーキーは「持っている男」。初先発初トライでチームに弾み

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 チャレンジである。先手必勝である。大学王者の早大が2週間前の明大戦とは違い、立ち上がりから、先に先に仕掛け続けた。攻めに攻める。前半20分で3トライを奪取。ライバル慶大を29-14で下し、ラグビーの全国大学選手権準決勝に駒を進めた。

慶大戦でトライを決めた早大のスーパールーキー伊藤大祐

 19日の東京・秩父宮ラグビー場、準々決勝だった。早大のゲームテーマが「ファースト(最初に)」と「仕掛け続けること」だった。だからだろう、早大選手には挑みかかる気概に満ちていた。

 とくに初先発の伊藤大祐である。昨季、神奈川・桐蔭学園高で主将として高校日本一に輝いた大物ルーキー。この日はチーム事情から、急きょ、センター(CTB)に入った。

 試合直前のロッカールームのことだった。早大・相良南海夫監督が伊藤に声をかけた。

「どう、緊張している?」

「ちょっと緊張しています」

「思い切ってやればいいよ」

 早大キックオフで試合が始まった。慶大のハイパントをロック(LO)下川甲嗣(かんじ)がナイスキャッチ。慶大ゴール前に攻め込み、背番号12の伊藤が、前に出るプロップ(PR)のサポートに寄る。

 前半5分、スクラムから主将でナンバー8の丸尾崇真が右サイド攻撃を仕掛け、持ち前のダッシュで右隅に先制トライを挙げた。その後、伊藤はパスを受けてはタテを突き、相手にも猛然とタックルしスローフォワードを誘う。

 早大が1トライを追加した後の前半20分だった。中盤あたりで、慶大の持つボールをフランカー(FL)相良昌彦が早大側にうまくはじき落とした。

 このこぼれ球をさっと拾ったのが、アカクロジャージーの背番号12だった。目の前の慶大選手2人の間のスペースを鋭く突き、前傾姿勢から一気にダッシュする。相手の姿が見えなくなると、アングルを少し変え、まっすぐ走りだした。ぐんぐんスピードに乗る。約55mを走り切り、ポスト下のど真ん中にボールごと滑り込んだ。ゴールも決まり、早大がリードを17-0にひろげた。

 この嗅覚、この瞬間ダッシュ、このスピードの伸び。立ち上がると、伊藤は破顔一笑、チームメイトから祝福を受けた。記念すべき初先発初トライ。天賦の才だけでなく、やはり何かを"持っている"。