明大・箸本が早大戦で爆発。主将として部員に促したグラウンド内外の変化 (2ページ目)
これまでは試合の立ち上がりが課題だった。だが、この日は圧巻の先制パンチ。明大は勢いづいた。攻守に圧力を増し、早大のミスを誘った。箸本主将の述懐。
「今日はポンポンと2つトライがとれて...。そういった展開は初めてだったんですけど、先制できて気持ちが楽になりました。(試合中)自分たちのラグビーがしやすくなるなと実感できたのです」
両者の勢いの差はとくに接点に表れた。明大は相手タックルの芯をずらしてレッグドライブ(足をかく)。二人目が早く強くサポートする。倒れたら素早く立ち上がる。いち早く3人セットで攻めの型をつくる。
明大の泥臭くて力強い攻めに、堅い早大の防御にほころびが生まれた。早大の丸尾主将を「接点の部分とスクラムの部分は想定以上」の圧力だったと嘆かせた。
コロナ禍による活動自粛の影響を受け、今季は「ぶっつけ本番で成長するしかないシーズン」(明大・田中澄憲監督)となった。
どの大学もチーム作りは遅れ、試行錯誤がつづく。全勝を続けてきた早大に対し、明大は慶大戦(11月1日)で苦杯を喫した。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)で後手に回ったからだった。
その敗戦を契機とし、箸本主将はグラウンド内外で部員に変化を促した。練習では選手間のコミュニケーションを意識させ、私生活では規律を大事にさせた。
箸本主将がモットーとする「小事大事」である。これは箸本主将の母校、東福岡高の藤田雄一郎監督の口癖でもあった。規律なきチームはどのチームにも勝てない。"小さいことをおろそかにしない"という意味だ。
箸本主将は言った。「試合に直接つながるかどうかわからないけど、自分たちの身の回りのことからもう一度、見直したんです。明治が強くなってきた時に大事にしてきたものが薄れていたんです。そこをもう一回やり直して、スキのないチーム作りに取り組んできました」
例えば、トレーナー室の道具の整理整頓、充電機器の管理、寮のそうじ...。チームに規律があれば、おのずとラグビー部全体の一体感は増す。
この日のラインアウトの圧倒も、試合メンバーの練習相手となるBチームの献身があってのことだった。ラインアウトの充実の理由を聞かれると、箸本主将は「Bチームが(早大の)"完全コピー"というぐらいレベルの高い練習をしてくれたから」と笑わせた。
マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた箸本主将はこう、部員に感謝した。
「対抗戦優勝は、試合メンバー23人だけじゃなく、一緒に練習してきたBチーム、Cチーム、Dチームのみんなの成果だと思っています。だから、本当にうれしい」
奔放の印象が強い明大だが、強い時期は総じて規律がちゃんとしている。才能ある学生たちがまじめにやれば、努力家の主将が先頭に立てば、そりゃ強くなるに決まっている。
無論、箸本主将には昨シーズンの苦い記憶が残っている。早明戦で圧勝(〇36-7)しながらも、再戦となった大学選手権の決勝(●35-45)で敗れた。
だからだろう、勝利の喜びに浸る間もなく、箸本主将は語気を強めた。
「去年は最終的には負けてしまったので、ここからが勝負だと思っています。常に成長していくチームが優勝をつかみ取れるのです。ワン・バイ・ワン、一歩一歩成長していきたい」
今年のチームスローガンが「One by One」。足元を見つめながら、明治スタイルで力強く、一歩ずつ、前へ。昨季の悔しさと覚悟と自信を胸に、2年ぶりの大学日本一へ突き進んでいく。
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