早大が全集中の仕掛けで慶大に勝利。スーパールーキーは「50点」デビュー (2ページ目)
早大はいつになくハイパントキックを多用した。これは自陣で慶大得意のジャッカルやラインアウトを避けるためだった。敵陣勝負。慶大1年生のフルバック(FB)山田響がハイパントキックの処理に戸惑うところを突き、ターンオーバーから最後は右に回してウイング(WTB)槇瑛人のトライにつなげた。
丸尾や槇だけではない。早大の図抜けた個性も光り輝いた。右プロップ(PR)の巨漢、小林賢太は鋭いチャージから好機を演出したほか、時にはラックの芯となり、時にはバックスもどきの巧みなパスも披露した。
勝負どころでは、スタンドオフ(SO)吉村紘の柔らかいランがさえた。前半21分、わずかなスキを突いて逆転トライを挙げた。
加えてフルバック(FB)の河瀬諒介だった。後半26分。早大は粘り強くつなぎ、正確な連続攻撃は18回におよんだ。最後はラックから右に回し、河瀬が力強いランで相手をかわして右中間に飛び込んだ。ダメ押しのトライ。
そして、大物ルーキーの伊藤大祐だ。後半33分、交代出場がアナウンスされると、スタンドから大きな拍手が巻き起こった。昨季の全国高校ラグビー大会で、神奈川・桐蔭学園を主将として優勝に導いた逸材。
小学生時代、九州の柔道チャンピオンになったこともあるというから、足腰、体幹もつよいのだろう。キックを捕球すると、相手タックルを外し、右サイドライン際を数十メートル快走した。
1年生とは思えない大きなプレーだった。シーズン前の太もも肉離れで大学デビューがこの日となったが、わずか8分間のプレーでも大器の片りんは垣間見えた。試合後のオンライン会見。大学デビューの感想を聞かれると、伊藤はマスク下の顔を少しゆがめた。
「点数を付けるとしたら、50点ぐらいの感じで...。もっと正確にプレーをできたところもありました。もっと大胆にチャレンジできれば、点数は上がっていくのかなと思います」
異例の大学シーズン。開幕戦(10月4日)の青学大戦では精度と連携不足で苦戦のスタートを切った早大だが、1戦ごとに課題を修正し、チーム力を上げてきた。コロナの影響による活動自粛期間でも学生たちにはオンラインなどで「つながる」ことを意識させてきた。
加えて、秋に入っては、学生が自主的に小グループごとの話し合いも頻繁に実施してきた。映像をみては一緒に考える。結果、個々のゲーム理解力、対応力が高まっている。シーズンに入って一番成長したところを聞かれると、早大の相良南海夫監督は言った。
「しっかりゲームの中で修正する力がついたというところと、一戦一戦、自分たちがやってきたことをゲームで自信を持ってできるようになってきたことかなと思います」
もちろん、昨季の大学日本一の経験値もある。チーム作りのノウハウもある。また、相良監督ほかフルタイムコーチが3人、週末コーチも3人など、充実したスタッフ陣がチームを支える。いわば総合力。
ただ、順調すぎるとコワくなる。好事魔多し、油断大敵だ。とくに学生は心の持ち様でチーム力がガラリと変わる。
次は、対抗戦の優勝がかかる12月6日の明大戦(秩父宮)。相良監督は「まだまだ成長過程」と漏らした。
「1日1日、いい準備をして、明治に持てる力をぶつけたいと思います」
激闘は必至だろう。鍛錬と修正。緊張と我慢の時間は、もうしばらく続くのである。
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