オールブラックスが有終の美。ラグビー王国の誇りと情熱をみせた

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 まさに「ラグビー王国」の意地である。黒いジャージにプライドとパッション(情熱)がほとばしる。史上初の3連覇を逃したニュージーランド代表オールブラックスが6トライの猛攻でウェールズを下し、3位で"有終の美"を飾った。40−17の完勝だった。

主将としてチームをまとめたオールブラックスのキアラン・リード主将としてチームをまとめたオールブラックスのキアラン・リード

「チームを誇りに思う」。黒色のレプリカジャージで染まったスタンドからの大歓声と拍手の中、この試合で退任するスティーブ・ハンセンHC(ヘッドコーチ)は涙声でそう、言葉をしぼり出した。

「負ける日もあれば、勝つ日もある。それがラグビーだ」

 2008年の初代表から積み上げたキャップ(テストマッチ出場数)が「127」。これで代表引退となるNZ(ニュージーランド)のキアラン・リード主将はピッチ上のインタビューで、そのキャップ数に触れられると、「私を泣かそうとしていないか」と苦笑いをつくった。

「黒いジャージは私の人生の大きな部分を占めていた。きょうは楽しいゲームだった。ファンのみなさんに喜んでもらえる試合ができたことを誇りに思う」

 1日夜のラグビーワールドカップ(RWC)の3位決定戦。ほぼ満員の4万9千人の観客で埋まった東京スタジアム。1週間前の準決勝でイングランドに敗れたNZにとっては、プライドをかけた試合だった。

 試合前。つかの間の静寂がスタンドを包む。恒例の「ハカ」だ。ラストゲームの儀式をリードしたのが、リード主将だった。掛け声が場を圧した。

 フォワード(FW)が当たり負けしなければ、15の黒いジャージが"生きた"ボールをつないでいく。変幻自在にみえる攻めを支える基本技術の確かさ。瞬時の判断のはやさ、鋭利するどいラン。そこにはラグビーという競技のオモシロさが存分に詰まっていた。

 タックルを受けながらパスをつなぐオフロードパスは相手と同じ「17」だった。でも、ウェールズとは威力がちがった。渡すタイミングやボディコントロールもだが、ボールをもらう選手の角度、間合い、ランスピードが決定的だった。

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