日本戦の悪夢から4年。
南アフリカを蘇らせた指揮官と黒人主将の絆
127年にわたる南アフリカラグビーの歴史で初めて黒人キャプテンとなった希望の星が、横浜の空に高々と「ウェブ・エリス・カップ」を掲げた――。
ラグビーワールドカップ45試合目となる決勝戦の舞台は神奈川・横浜国際総合競技場。11月3日、「ラグビーの母国」イングランド代表(世界ランキング1位)と「スプリングボクス」南アフリカ代表(同2位)が激突した。
優勝カップを天高く掲げるキャプテンのシヤ・コリシ イングランドラグビー協会の名誉総裁を務めるヘンリー王子、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領、そして今大会名誉総裁の秋篠宮文仁親王が観戦するなど、世界的にも耳目を集めた一戦。スタンドには、2002年のサッカーW杯の記録を抜く70,103人のファンが集った。
下馬評は、準決勝で3連覇のかかった「オールブラックス」ニュージーランド代表に19-7で快勝したエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)率いるイングランド代表が優勢と見られていた。
しかし、試合開始早々から「フィジカル強国」南アフリカ代表が攻守にわたって前に出続けて、スクラムでもイングランド代表を圧倒。SO(スタンドオフ)ハンドレ・ポラードが4本のPG(ペナルティゴール)を決めて、前半を12-6のリードで折り返した。
後半、イングランド代表は控え選手を投入し、リズムを変えようと試みる。だが、南アフリカ代表も通常より多い6人もの控えFW選手「ボム(爆弾)スコッド」を次々と投入して対抗した。
この試合、初めてのトライが生まれたのは後半26分。南アフリカ代表のWTB(ウィング)マカゾレ・マピンピがボールを裏に蹴ると、それを味方がキャッチして再びマピンピにパスを通し、最後は左中間にトライを決めた。
さらに後半34分、イングランド代表のミスを突いて反撃に転じると、身長170cmの「ポケットロケット」WTBチェスリン・コルビがスピードを生かして突破。相手のタックルをするりとかわしてトライを挙げた。
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