エディー・ジョーンズは後半重視でNZ撃破「フィニッシャーを先に決めた」 (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 ジョーンズHCは常々、ラグビーの試合はラスト20分で勝負が決まる、と口にしてきた。この日はNZに反撃を許さなかった。イングランドの運動量が落ちなかった。なぜかといえば、選手交代のタイミングが絶妙だった。

 後半7分、疲労がみえた右PR(プロップ)のカイル・シンクラーを、後半14分はLO(ロック)のコートニー・ロウズを、後半29分には左PRのマコ・ブニポラ、HO(フッカー)のジェイミー・ジョージらを一緒に代えた。

 ジョーンズHCが説明する。

「私はフィニッシャー(最後の15人)を先に決めた。それを決めてから、先発の15人を決めた。(ラスト20分は)一番重要な時間帯だ。ニュージーランドに勝つためには、フィニッシャーが大事なのだ」

 ジョーンズHCは、前回W杯後に日本代表HCを辞め、"ラグビーの母国"イングランドのHCに就任した。日本チームのスーパーラグビー参入を推進するなど、今大会活躍した日本代表の素地をつくったと言ってもいい。

 イングランドは前回W杯では開催国でありながら、1次リーグ敗退の屈辱を味わった。辛口の英国メディアにたたかれようとも、ジョーンズHCは結果を出してきた。2016年、17年、欧州六カ国対抗を連覇。昨年11月には、過去、W杯で3戦全敗のNZに1点差で惜敗していた。

 やはりエディーはエディーである。日本代表より優れたタレントを徹底して鍛え、決勝の舞台にまで引き上げた。会見でのジョークも相変わらずだ。楽しい。これでHCを辞めるNZのスティーブ・ハンセンのことを聞かれると、「これからは一緒にビールを飲む」と言って、記者を笑わせた。

「次はトヨタ(自動車)でコーチをやると聞いている。それで、トヨタの車はもっと速くなると思う。あっ。ワールドカップのスポンサーとは違う車の名前を口にしたので、トラブルになるかもしれない...。彼は素晴らしいラグビー人生を歩んでいる」

 最後に。

ジョーンズHCはミーティングでイングランドの選手たちにこう、言い続けてきた。

「世界最強のチームになろう」

 豪州のHCをした2003年W杯では決勝で延長戦の末、イングランドに敗れた。これもめぐり合わせか。今度はその59歳がラグビー母国の代表チームを率い、優勝にひた走る。野望達成まで、あと1つである。

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