ついにエース福岡堅樹が大爆発。歴史的勝利に「すべて捧げてきた」 (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 ノックオン。そう見えた瞬間、福岡はなんとか地面ぎりぎりでボールを両手でつかみ、約40mを走り切った。執念だった。「ティモシー選手がいい形でプレッシャーをかけて前でつぶしてくれた」と振り返った。

「低いボールはもともと得意なので。あれは大丈夫でした。案外、ふつうにとれました。(相手が)内にいる気配は感じていましたが、スピードで振り切れるなという手応えがあって...。興奮しました」

 はた目には偶然にみえるプレーだが、実は練習のたまものである。タックルを受けた後の内側へのパスも、相手のボールをもぎとる練習も、宮崎合宿で何度もやってきた。それが大一番で生きたのだ。短い言葉に充実感を漂わす。

「準備です。どれだけ準備してきたのかが出たんだと思います」

 ランニングだけではない、相手パントキックのキャッチもタックルも、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)でもからだを張った。終了直前のスコットランドの猛攻中、ブレイクダウンで相手からボールを奪うジャッカルを成功させたのは福岡だった。

「昔からジャッカルは好きでよくやっていましたから。僕はスピードだけじゃない。やはりワークレート(仕事量)だったり、ボールを積極的にもらいにいくところだったり、そういうところもアップしてきました」

 ボールを持っての走行距離は両チーム断トツの116mをマークした。大会の「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」だけでなく、チーム内MVPにも選ばれた。ミックスゾーンには、このチーム内MVPに渡される赤い刀(レプリカ)を右手に持って現れた。

 チームメイトの信頼を得た証だ。ちょっぴり誇らしげだった。

「チームみんながからだを張ってくれた中で、そういう風(チーム内MVP)に認められるのはさらにうれしいです」

 これで福岡は今大会4トライ。もう一人の快足WTB松島が計5トライで一歩先を行く。松島が冗談口調で言った。

「今まで休んでいたので、すごく調子いいなというのはありますね。(福岡)ケンキも(トライ王を)十分狙える位置にいます。力もあるので、すごくいい刺激になっています」

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