松島幸太朗は南アより桜ジャージーを選んだ。「日本への気持ちは大きい」 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 その松島の決断を受けて、当時の日本代表指揮官エディー・ジョーンズHCはすぐに声をかけた。松島は2013年秋の欧州遠征に招集され、日本選抜としてイングランドのクラブチームとの試合に出場する。そして、トップリーグのサントリーと契約し、2014年には代表初キャップを獲得すると2015年のワールドカップには中心選手としてピッチを駆け抜けた。

 その後、松島は「もっと上を目指したい」という理由で、サントリーに所属しながら2015年からの4年間、オーストラリアのワラターズ、レベルズ、そしてサンウルブズと、常にスーパーラグビーのチームに身を置いてレベルアップに力を注いだ。その結果、2017年度のトップリーグではサントリーを優勝に導き、シーズンMVPにも輝いた。

 この4年間、松島自身が一番伸びたと思うところは、スキルよりもメンタルだと言う。「どの試合でも落ち着いてプレーでき、考えながらプレーするようになった」。

 いよいよ迎える、2度目のワールドカップ。前回と今回の違いを、松島はこう語った。

「前回は『試合に出られればいい、先輩たちについていけばいい』という感じだったが、今回はリーダー陣のひとりとして臨むので、『チームがいい方向に進んでいるのか?』を見極めないといけない」

 また、日本開催のワールドカップをきっかけに、ラグビーのよさを少しでも広めたいと考えている。東日本大震災や熊本地震などの支援の一環として、松島は日本代表の試合に子どもたちを招待する活動を続けている。

「ラグビー好きな子も、今まで見てなかった子も、自分たちがプレーしているところを見せて、ラグビーをやりたいと思ってくれればそれでもいいし、気持ち的に高まることにつながればいいかなと。シンプルに試合を楽しんでもらいたい」

 松島はワールドカップ後、イングランドでもフランスでも「ヨーロッパに行けるのであれば、どんどん出ていきたい」と、欧州挑戦にも意欲を燃やす。ただその前に、ワールドカップで日本代表の歴史を塗り替える大仕事が待っている。

 飽くなき向上心を持つエースは、ワールドカップのピッチを颯爽と駆け抜けて、スタジアムの大観衆、そしてテレビで観ている多くのファンに歓喜の瞬間を届ける。

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