大畑大介のラグビーW杯の思い出
「あるプレーでメチャメチャ怒られた」

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

レジェンドたちのRWC回顧録⑨ 1999年大会 大畑大介(前編)

『日本ラグビーの顔』である。いつもカッコいい。43歳とは思えない精かんな風貌、爽やかな笑顔。ラグビーワールドカップ2019アンバサダーを務める日本ラグビー界のレジェンド、大畑大介さんはラグビーの"宣伝部長"を自認する。

明るく、かつテンポよくいろいろ語った大畑大介明るく、かつテンポよくいろいろ語った大畑大介

「僕は、この大会に限らず、ラグビーを広めていくアンバサダーでないといけないと思っています。まずは日本でのワールドカップが、もっともっと盛り上がってほしい。僕が活動することが、"ラグビー村"の外側の人に対して、目を向けてもらうきっかけになるんじゃないかと思っているんです」

 日本のラグビーの顔と言えば、松尾雄治さん、故・平尾誠二(享年53歳)さんと引き継がれてきたが、大畑さんは人気の出方のパターンがふたりとは少し違うと感じている。確かにテストマッチ(国別代表戦)におけるトライの世界記録(69個)を持つけれど、テレビのバラエティー番組などに出演して知名度は大きくなった。

「ほかの方はラグビーからの影響力で世の中に浸透していったと思うんです。でも、僕はテレビで知ってもらってから、"大畑はラグビーをしているんだ"と認識してくれた人も多いんじゃないかと。僕は(認知の)入り口がすごく大事だと思っています」

 8月下旬。この日もテレビ出演の後、場所を移してのインタビューだった。大畑さんは1999年ウェールズ大会、2003年豪州大会と続けてRWC(ラグビーワールドカップ)に出場した。2007年フランス大会では大会直前、アキレス腱断裂の重傷を負って出場を逃した。帰国して、そのRWCを応援する立場として迎えた時の違和感がいまでも脳裏に残っている。

「アレ?って。(ワールドカップの注目度って)こんなもんやったんかって。さみしい思いになったんです。選手にしたら一生に一度ぐらいの覚悟で臨んでいるのに、一般の人との温度差を感じたんです」

 だから、周囲のRWCへの関心を高めたい、と熱望した。2009年7月28日、2019年RWCの日本開催が決まった時、その時点で現役引退を考えた。そして、2010年シーズン限りで現役を引退。「僕は早めに(現役を)辞めて、ワールドカップやラグビーに関して、周りから少しでも目を向けてもらえるように活動していかないといけないと思ったんです」と述懐するのだった。

 RWCを「4年に一度のラグビーの世界的お祭り」と表現する。

 大畑さんが日本代表への階段をイッキに駆け上がり、初めて挑んだ1999年ウェールズ大会を振り返ってもらった。日本は3戦全敗に終わり、世界レベルとの差を痛感することになった。

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