2019.08.05

代わりなき男・トモさんが日本を鼓舞「みんながグッとひとつになる」

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 ラインアウトからモールとなり、トンガの白いジャージの塊を、日本代表フォワードの濃紺ジャージが束になって押しとどめる。後部からどんとくさびを打ち込んだのがトンプソンだった。押す。耐える。モールはほとんど動かず、トンガにボールを出させた。オープンに蹴らせ、相手のミスもあって、トライにはならなかった。

「ラッキーだった」。トンプソンは流れ落ちる汗もぬぐわずに漏らした。フィジー戦で負った右目の下にはまだ、あざが残っている。けがはからだを張った選手の勲章か。

「あれで、僕らは逆に勢いをつけたんだ。きょうのラインアウトのディフェンスの出来はスバらしい」

 日本代表は反撃に転じ、前半10分、こんどは日本FWがゴール前ラインアウトからのモールをごりごり押し込んで、最後はナンバー8のアマナキ・レレイ・マフィがインゴールに抑え込んだ。先制トライ。

 これで日本は流れをつかんだ。素早く、激しく、迷いのないディフェンスでリズムをつくった。チームの成長をいえば、対応力だろう。トンガのラインのうしろにスペースがあるとみるや、効果的なキックを絡めていった。相手ラインアウトの雑さを見ては、タッチキックも増やした。臨機応変だ。

 田村優の絶妙キック。松島、福岡堅樹の快走...。5トライを奪ったのも、ディフェンスと、ラインアウト、スクラムのセットプレーの安定があったからだろう。ラインアウトは、日本ボールでは9本中7本を成功させた。トンガボールは16本中8本にとどまった。実は、日本FWはうまくプレッシャーをかけ、相手のハンドリングミスを誘っていた。

 この試合、トンガの先発FWには身長190cm台が5人もいるのに、日本は196cmのトンプソンひとりだった。高さの差を「精度」と「クイックネス」、「コンビネーション」でカバーする。疲れていても、スローワーとジャンパー、リフターが同じタイミング、同じ高さのリフティングをできるかどうか、だ。

 宮崎合宿でも、夜のセッションでラインアウトに割く時間が増えていたからだろう。みんなの呼吸が一致するようになってきた。

 トンプソンは満足そうに言った。

「きょうのメンタルの意識と精度はスバらしかった」

 トンプソンは「経験値」と「ハードワーク」に長けている。動きに無駄がなく、素早いサポートプレーに徹する。ランが得意の選手の中にあって、ラックのすき間に頭を突っ込む選手は貴重だ。タックルも、基本通り、まっすぐ、激しくからだをあてていく。