2019.06.28

吉田義人が演出。W杯の伝説トライ
「クロヒョウになると念じていた」

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

レジェンドたちのRWC回顧録⑥ 1991年大会 吉田義人(後編)

 風に向かって立つライオンでありたい。ラグビー界のレジェンド、吉田義人さんは明大主将時代、そう考えていたそうだ。

 妥協は決して、しない。折れず、ひるまず、「数々の試練」に真っすぐな姿勢を貫いた。「ストイック」な印象もあった。吉田さんは「中身はクロヒョウでしたけど」と笑った。

ラグビーW杯に向け、日本代表にエールを贈った吉田義人

「僕は、親からもらった身体に加え、努力を積み重ねたから日本代表になれたんだと思います。育った秋田の男鹿半島は自然の宝庫でした。中学生の頃からひとりで山籠もりして…。僕は、獣のような選手になりたかったんです」

 子どもの頃、流行ったアニメの「タイガーマスク」、その秘密特訓基地の「虎の穴」にあこがれた。「人間の知性を持った獣になるため、山に入りました」と振り返る。

「僕は、相手に触られたくなかった。ま、究極ですよ。15人に触られなければ、トライが取れるわけです。自分で、クロヒョウになるんだって念じていました。自分でイメージをつくる。光に包まれて走っているクロヒョウ。だから、誰も俺に触れないって」

 吉田さんは現役時代、イメージトレーニングに取り組んだ。大活躍した1991年のラグビーワールドカップ英国・アイルランド大会の時も、試合前、ロッカールームで着替えている時、ひとり、冷えた木製のベンチに寝ころび妄想していたそうだ。

 初戦のスコットランド戦(9-47)も、続くアイルランド戦(16-32)も。

「ベンチの他の人に邪魔にならないところで。からだの毒素と邪気をとりのぞく。神からもらった生まれたままのからだで、血液も全部きれいにして試合に挑んでいました」

 結果、クロヒョウのごとくプレーした。アイルランド戦では大会ベストトライ候補となるランを演出し、自らもトライを加えた。記念すべき初勝利となるジンバブエ戦(52-8)では2トライをマークした。