吉田義人が演出。W杯の伝説トライ「クロヒョウになると念じていた」
レジェンドたちのRWC回顧録⑥ 1991年大会 吉田義人(後編)
風に向かって立つライオンでありたい。ラグビー界のレジェンド、吉田義人さんは明大主将時代、そう考えていたそうだ。
妥協は決して、しない。折れず、ひるまず、「数々の試練」に真っすぐな姿勢を貫いた。「ストイック」な印象もあった。吉田さんは「中身はクロヒョウでしたけど」と笑った。
ラグビーW杯に向け、日本代表にエールを贈った吉田義人
「僕は、親からもらった身体に加え、努力を積み重ねたから日本代表になれたんだと思います。育った秋田の男鹿半島は自然の宝庫でした。中学生の頃からひとりで山籠もりして...。僕は、獣のような選手になりたかったんです」
子どもの頃、流行ったアニメの「タイガーマスク」、その秘密特訓基地の「虎の穴」にあこがれた。「人間の知性を持った獣になるため、山に入りました」と振り返る。
「僕は、相手に触られたくなかった。ま、究極ですよ。15人に触られなければ、トライが取れるわけです。自分で、クロヒョウになるんだって念じていました。自分でイメージをつくる。光に包まれて走っているクロヒョウ。だから、誰も俺に触れないって」
吉田さんは現役時代、イメージトレーニングに取り組んだ。大活躍した1991年のラグビーワールドカップ英国・アイルランド大会の時も、試合前、ロッカールームで着替えている時、ひとり、冷えた木製のベンチに寝ころび妄想していたそうだ。
初戦のスコットランド戦(9-47)も、続くアイルランド戦(16-32)も。
「ベンチの他の人に邪魔にならないところで。からだの毒素と邪気をとりのぞく。神からもらった生まれたままのからだで、血液も全部きれいにして試合に挑んでいました」
結果、クロヒョウのごとくプレーした。アイルランド戦では大会ベストトライ候補となるランを演出し、自らもトライを加えた。記念すべき初勝利となるジンバブエ戦(52-8)では2トライをマークした。
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