包囲網が強まっても帝京大に迷いなし。早大撃破で偉業達成へひた走る (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 帝京大は従来、あまりスクラムにこだわらないチームだったが、今年は強化に力をかけている。練習で8人対8人の"ライブ・スクラム"の数は10本足らずでも、「1本1本を大切にしている」と説明する。

 春の試合で明大に敗れたときはスクラムでやられた。「僕自身が敗因でした」と岡本は述懐する。夏合宿の明大戦、早大戦での敗戦も、スクラムで後手を踏んだ。その悔しさを糧とし、日々の練習に打ち込んできた。

「努力は裏切らない。ひとつひとつ進化しているんじゃないかなと感じています」

 ついでにいえば、帝京大のフロントロー3人(岡本、呉季依典、淺岡)はいずれも京都成章高出の最上級生が並んでいる。岡本は、1年生の途中にロックからプロップに転向した。

「やっぱり、呼吸が合います。高校、大学とずっと一緒ですから。口で言わなくても、お互い、何をしたいかがわかります」

 もっとも、まだチームは成長途上である。後半は、ディフェンス網がゆるみ、早大のスピード豊かな攻めを許し、4トライを奪われた。ノーサイド。結局、45-28で夏合宿の敗戦の雪辱を果たした。 

 エースのフルバック竹山晃暉は笑顔だった。6ゴール、1PG(ペナルティゴール)はすべて蹴り込んだ。

「リベンジするということに、Aチーム(試合メンバー)だけでなく、ラグビー部全員の意思疎通ができたことで、帝京らしいゲームができたんじゃないかと思います。とくに前半は、もうこんな時間なんだという感じでした。たぶん、ラグビーを楽しめていたからだと思います」

 帝京大は今季、春、夏に明大、早大に敗れていた。かつてあったフィジカルや体力の差は他校の努力でそれほど感じられなくなった。帝京包囲網は年々強まり、戦術、戦法も研究されている。でも、百戦錬磨の岩出監督にチーム作りの迷いはない。

 毎年、この時期にチームががらりと変わる。強くなる。どんなマジックを? と聞けば、岩出監督は「マジックなどないよ」と笑い飛ばした。

「タイミングでしょ。例えば、お腹が減った時、よく食べるのと一緒で、悔しいな、うまくいかないな、という時に、年輩の我々が、どうするのかです。夏に負けていれば、気合を入れなくても、気合が自ずと入ってきますよ。どうなりたいの、どうしたいの、どうして。学生に考えさせながら、学生を育てていっているんです」

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