W杯の切り札に。野口竜司は「ポスト五郎丸」の枠を超えたラガーマン (3ページ目)

  • 向風見也●文 text by Mukai Fumiya
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

 日本代表は6月のツアーを1勝2敗と負け越し、2年後のW杯日本大会に向け強化を不安視する声も上がったが、野口は「個人的に収穫の方が多かった」と言い切った。

 6月のツアーで印象的なプレーがある。10日に熊本で行なわれたルーマニア戦の前半12分。味方が相手のボールを奪った瞬間、野口は最後尾から一気に駆け上がった。その勢いでボールを受け取ると、右隣にいたアウトサイドセンターのティモシー・ラファエレにパス。この攻守逆転への鋭い反応で、最後はウイングの山田章仁のトライを呼び込んだ。

 ジョセフHC率いるジャパンは、アンストラクチャー(セットプレーを介さない状態)からの緻密なアタックを目標に掲げる。その意味で、判断力やスキルの高い野口は、指揮官のニーズに合致した選手といえる。

「試合に出させていただくなか、周りに助けられて(自分の)持ち味を生かしながら動けた部分があった。ターンオーバーの反応は、自分のなかでも早くなっているなと感じました」

 プレーを支える頭脳の基盤は、高校時代につくられた。大阪の枚岡中でラグビーを始めた野口は、全国屈指の強豪校・東海大仰星に進んだ。そこで土井崇司監督(現・東海大テクニカルアドバイザー)に出会い、ラグビーの理論を叩き込まれ、持ち前の負けん気も鍛えられていった。

「中学校のときはただ周りに負けたくないとの思いで一生懸命やっていた。高校に入って、頭を使ったプレーや理論を意識するようになりました。左足でのキックも必要だと思って練習していたら、土井先生に『ゴロしか蹴られへんのか』と言われて......悔しいのでロングキックも蹴れるように、練習していました」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る