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代表100キャップ、2019年W杯へ。
不屈の男・大野均は終わらない (3ページ目)

  • 向風見也●文 text y Mukai Fumiya
  • photo by Nagao Aki/AFLO

 2011年のW杯ニュージーランド大会は、出番が限られるなかフランス大会と同じく3敗1分で終えた。大野の立場が再び好転したのは、エディー・ジョーンズHCが就任した2012年からだ。

「おそらく次のイングランド大会(2015年)で大野はプレーしていませんが、今の日本代表には必要です」

 ジョーンズHCのインタビューに掲載されていたこんな内容の言葉を人づてに聞き、大野は即答した。

「いい意味で期待を裏切りたい」

 ひとつひとつの練習に全力で挑むという姿勢を大野は貫き、次第にジョーンズHCから信頼を得ていった。

 2015年の宮崎合宿では、手の甲骨折しながらも「それを理由に練習を休んで、メンバーに入れなかったら悔いが残る」と、痛みをこらえて黙々と練習に打ち込んだ。

 そしてこの年の秋、大野は期待を裏切りW杯イングランド大会のメンバーに選出された。

 過去2回の優勝を誇る南アフリカ戦で先発し、歴史的な白星を挙げる。続くサモア戦では、前半終了間際に大腿部の肉離れを起こすも、足を引きずったまま駆け回った。

「筋肉がバチッといった瞬間、『あぁ、これで自分のワールドカップは終わったな』と。でも、まだプレーは続いていて、すぐに交代できる流れではなかった。自分は、逆にラッキーと思いました。この試合で悪化してもいいから、最後まで走り続けようと攻撃に参加したら......」

 大野が踏ん張って守ったボールを、最後は山田章仁が受け取り、体を回転させながらゴールラインへと飛び込んだ。のちに"忍者トライ"と称賛されたこのプレーは、大野の生き様を示すかのような動きから生まれた。そしてこのプレーのあと、大野は退いた。

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