【ラグビーW杯】涙の3勝目! この勝利が2019年W杯へのスタート (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤 龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 これを拾ったW杯初出場の22歳、ウイング(WTB)藤田慶和(早大)がうまくラックを作り、一気に左ラインに回して、WTB松島幸太朗(サントリー)が左中間に飛び込んだ。その後、米国に逆転トライ(ゴール)を許したが、直後のキックオフを相手がこぼし、藤田が拾って前に出た。これが柔らかい動きでうまかった。FWがモールをぐりぐりと押し込んで、最後は藤田がボールを右中間に押さえた。日本が再び逆転する。W杯初出場で初トライ。藤田は思わず両手を突き上げた。

 やはりこの若武者は何かを持っている。でも、なぜ、バックスの藤田がモールに入っていたのか。得意顔で説明する。

「あそこはもう(モールを)押せるとの判断で、人数をかけようと言ったんです。だから、僕も(モールに)入って、たまたま、トライしただけなんです。あれはFWが頑張ったトライなんです」

 それにしても、初のW杯にも気後れするところは微塵も見られなかった。大舞台を十分、楽しんだ。藤田は小さく笑って続ける。

「ワールドカップといっても、緊張しなくて、いつも通り、(試合に)入れたことがよかった要因じゃないでしょうか。苦しい時にチームを前に出せたのがよかったと思います」

 日本代表は大きく成長した。心身ともタフになった。「対応力」がついた。正直、前半の序盤の出来はあまりよくなかったが、徐々に連携を強めていった。前半の終了間際には、ゴール前のピンチのスクラムでも耐え、ついには結束してコラプシング(故意に崩す行為)の反則をもぎとった。

 後半はディフェンスラインも整備され、FWの2人目の寄りがはやくなっていた。結局、日本は米国に28-18で勝ち、有終の美を飾った。これまでW杯で通算1勝21敗2分けだったチームが、24年ぶりの勝利を南アフリカから奪って世界を驚かし、3勝も挙げたのである。

 W杯では米国と3度目の対戦にして初勝利。しかも22歳コンビの活躍が日本ラグビーの将来に夢を抱かせる。

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