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【ラグビー】マイペースで世界へ。日本の宝、松島幸太朗 (2ページ目)

  • 松瀬 学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • 長尾亜紀●写真 photo by Nagao Aki

 この日の試合序盤。NTTドコモによもやの先制トライを奪われた後だった。サントリーがPKの速攻から連続攻撃を仕掛ける。いいテンポで相手ゴール前のラックから左にボールが出た。ディフェンスは2人。3人のラインができたサントリーでは、外のWTB松島があまっていた。絶好のトライ・チャンス。
 
 SO(※3)トゥシ・ピシからフッカー小澤直輝にはやいリズムでボールが回ったが、小澤から松島への外のパスが浅かった。スローフォワード。チャンスがつぶれた。
(※3)スタンド・オフ。スクラムやラックなど、密集から出てきたボールを最初に受け取るポジションで、キック、パス、ランなどを選択し、攻撃の起点に

「あの時、トゥシに"カットで放って"と言ったんですが」と松島は振り返る。つまり、小澤を飛ばして、ピシから直接、ボールをもらいたかったのだ。だから、上がりがはやく、浅くなったのだろう。でも、そのコールはピシには届いていなかった。
 
 サントリーのラグビーは"はやい"。全員がはやく判断し、全員がはやく動いている。相乗効果を出すためには、周囲との連係が求められる。特にボールを持っていない時の動きやコールが大切なのだ。
 
 大久保直弥監督は言う。

「マツ(松島)、2トライはできましたよ。基本的に静かな男だけど、少しずつ、声は出るようになってきた。もっとトライをとれる選手になるためには、ボールを持っていない時の動きを考え、プレーしないといけない」
 
 才能は文句なしだ。南アフリカのプレトリア出身。天性のバネとセンスは神奈川・桐蔭学園時代から光り輝き、高校卒業後の南アフリカ挑戦でさらに磨かれた。抜群の馬力、体幹のつよさ、スピード......。バスケットボール選手のごとく、予期せぬ角度に鋭いステップも踏める。もう、見ていてワクワクする。
 
 178センチ、83キロ。ただ自分のスピードに耐えうるストレングスがまだ、ない。だから、ケガが多くなる。周囲との意思疎通も物足りない。大久保監督は「もっと自分を出せ!」と檄をとばす。

「もっと自分を出していけば、要求も出てくる。彼は、2019年(日本開催のワールドカップ)の時、日本の中心にいないといけない。"その自覚はあるのか"と本人には言います。サントリーとしても、日本の宝を預かっている責任がある」

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