【ラグビー】全勝で2冠。監督と選手が語る「サントリーの強さの正体」 (2ページ目)

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu 井田新輔●撮影 photo by Ida Shinsuke

 キックオフ直後、相手ノックオンのターンオーバーから、南ア代表SHのフーリー・デュプレアが判断よく左ラインに回し、34歳のWTB小野澤宏時が左ライン際を好走、ラックから右に大きく振って、最後は2年目の24歳WTB村田大志が右中間に走り込んだ。一度もプレイを途切れさせないノーホイッスルトライだった。

 その後のゴール前ピンチのディフェンスがすこぶる堅かった。FWの体重増とフィジカルアップはタックルの強さにもなっている。大久保監督が説明する。

「当然でしょ。FWひとりの筋肉が2、3kgずつ増えているのですから。サントリー相手にはボールをキープしてアタックさせないチームが増えているので、うちのディフェンス力の向上は必要でした」

 勝負のポイントとなったのは、後半の立ち上がりだった。ハーフタイムで元豪州代表のジョージ・スミスがFWに檄を飛ばしていた。「もっとアグレッシブにいくぞ」と。

 この時、サントリーはシンビン(反則による一時退場)でひとり少ない状況だった。FWの運動量を上げ、定石通り、ボールをキープして攻め続ける。SO小野晃征が左足で絶妙なゴロキックをインゴールに転がした。

 これをCTB平浩二が反応よく追走し、押さえた。これで22-3。ひとり少ない状況でのトライは、スコア以上に、精神的な打撃を神鋼に加えただろう。

 小野が言う。

「相手のラッシュディフェンスに対し、ラインの裏のスペースがあるのは分かっていた。サントリーは常にスペースに誰かが走り込んでいく。それを信じて蹴った。(トライは)正直、ラッキーだと思った」

 大久保監督はこうだ。
「ひとり少ない時間帯、一人ひとりが仕事量を2倍、3倍に上げてくれた。その全員の意思が、トライにつながったと思います」

 最後は大量リードに気が緩み、神鋼に3トライを許したけれど、36-20の完勝である。神鋼のエース、南ア代表のジャック・フーリーは左目を出血させながら、こう漏らした。

「すべてにおいてサントリーが強かった。非常に我慢強いラグビーをする。どんなにフェーズ(局面)を重ねていっても、精度が落ちない。こちらへのプレッシャーがどんどん大きくなっていった」

 若手とベテラン、チーム全員が融合しての優勝である。入社3年目までの「SOS(ソス)」(Seeds Of SUNGOLIATH=サンゴリアスの種たち)と称した若手の成長もあって、チーム内競争は間違いなく、昨季より激しくなった。

 練習の質も厳しくなった。今季から、早朝には筋持久力を高めるトレーニングも加わった。思い切り乳酸をためて、コンタクトトレーニングに挑む。「自分ではやりたくないくらいきつい」(大久保監督)そうだ。

タフな練習と競争がチーム力を押し上げる。実は試合前日の練習。試合に出ない控えの約20人のうち、11人もが筋力トレーニングで自己ベストを記録した。ここにチームの強さの秘密が垣間見える。

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