【ラグビー】連敗から見えてきたエディー・ジャパンの方向性と可能性

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

試合後、「来年は15点差でトンガに勝つ」と公言したエディー・ジョーンズHC試合後、「来年は15点差でトンガに勝つ」と公言したエディー・ジョーンズHC 辛抱の時である。

 試合後のロッカールーム。エディー・ジョーンズ新ヘッドコーチ(HC)は珍しく声を荒げた。趣旨はこうだった。

「テストマッチはコントロールできない部分がある。でも、なぜ、あのプレイを選択したのか。今日は自分たちのミスからの敗戦だ」

 百戦錬磨の名将が顔を真っ赤にするほど、悔しい敗戦だったということである。勝てる試合だった。だが国代表同士のテストマッチではひとつのハンドリングミス、ひとつの判断ミスが命取りとなる。

 6月10日、ラグビーのパシフィック・ネーションズ杯のトンガ戦(秩父宮ラグビー場)。日本はフィジー戦(19-25)に続き、この試合も20-24で敗れて2連敗となり、大会2連覇の可能性が消えた。

 記者会見。通路の奥の部屋から、トンガの歓喜の歌が流れてきた。「テストマッチが終わった」とジョーンズHCは言う。

「ひとつのチームが歌を歌っている。ひとつのチームが涙を流している。本当にたくさん、初歩的なエラーがあったからです」

 敗因を絞れば、甘いディフェンスと判断ミスである。勝負どころのラスト20分。トンガの足が止まりかけていたのに、自陣からのカウンター攻撃による連続攻撃でトンガに勝ち越しのトライを許した。

 主将のウイング広瀬俊朗は反省した。

「基本的にはタックルのスキルの問題。1対1のタックルミスだと思う。カバーする能力も上げないといけない」

 個人のサイズやフィジカルではトンガに及ばない。ならば、どうするか。強烈なタックルと「プラス2人目」で勝負するしかない。だが、タックルも2人目も弱かった。攻めては、ランニングコース、ボディーポジション、あたりの高さ、サポートプレイ......。

 判断ミスの典型はラスト10分だった。相手がシンビン(10分間の一時退出)でバックスがひとり減る。日本は「15対14」で数的優位に立った。残り5分。敵陣22メートルラインのゴールライン側でラインアウトの好機を得た。ここで交代出場のフッカーの有田隆平がスローイングでノットストレートを犯す。チャンスが潰れた。

 ただスローミスはともかく、問題はなぜ、5人ラインアウトだったのか。ここはオールメンの7人で並び、すぐ右に回してセンターでラックをつくり、順目勝負が順当だった。数的優位を生かすべきだった。

 ジョーンズHCも嘆く。

「重要なところでのスキルエラー、戦術の選択ミスが起きてしまった」

 最後のチャンスでは、ラックサイドでSH日和佐篤からのクロスパスをプロップの畠山健介がノックオンし、反則をとられた。

 空は雨雲が出始め、スタンドからはため息がもれる。「経験の差」と言ってしまえばそれまでだが、特に25歳のSH日和佐と25歳のSO小野晃征、22歳のCTB立川理道にとっては厳しいレッスンとなっただろう。

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