【ラグビー】悔しさを胸に。日本選手権で帝京大が見せた「大学王者の悲哀と希望」。

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • 小倉和徳●撮影 photo by Ogura Kazunori

東芝を相手に奮闘した帝京大主将の森田佳寿。卒業後はその東芝への加入が決まっている東芝を相手に奮闘した帝京大主将の森田佳寿。卒業後はその東芝への加入が決まっている もはや大学3連覇のプライドだけだった。

 ノーサイド直前、トップリーグ(TL)の東芝に14本目のトライを奪われた。インゴールの円陣で、帝京大の主将、SO森田佳寿は声を絞り出した。「自分たちの意地を、プライドを出し切ろう」と。

 ゲーム再開のキックオフの時、終了のホーンが鳴る。すなわち、ラストプレイである。白黒のセカンドジャージの帝京大が気力を振り絞る。SH滑川剛人がSO森田にパスを出し、ブルーの東芝の壁を破りにいく。

 PKをとる。滑川がすかさず、速攻をしかける。森田がクラッシュ。ラックから左へ。またPK。また速攻。滑川から森田へ。ラックを重ね、最後はFWの固まりがインゴールになだれ込み、やっとトライを返した。

 電光掲示板のタイムは「44分」となっていた。まさに意地のトライだった。森田が左目だけで笑った。右目は打撲で膨れ上がり、ジャージの右肩には血が染まっていた。

「いやあ、東芝さんは強かった。激しかった。でも自分たちの力は出し切りました」

 3月4日。埼玉・熊谷ラグビー場での日本選手権の準々決勝である。いまにも雪が降りそうな寒さと灰色の空だった。

 帝京大×東芝。はっきり言って、"ミスマッチ"である。ボクシングでいえば、ミドル級とヘビー級の試合のようなものか。戦前のファンの関心は勝敗ではなく、どこまで帝京大が健闘するかだった。

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