2012.03.05

【ラグビー】悔しさを胸に。
日本選手権で帝京大が見せた「大学王者の悲哀と希望」。

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • 小倉和徳●撮影 photo by Ogura Kazunori

東芝を相手に奮闘した帝京大主将の森田佳寿。卒業後はその東芝への加入が決まっている もはや大学3連覇のプライドだけだった。

 ノーサイド直前、トップリーグ(TL)の東芝に14本目のトライを奪われた。インゴールの円陣で、帝京大の主将、SO森田佳寿は声を絞り出した。「自分たちの意地を、プライドを出し切ろう」と。

 ゲーム再開のキックオフの時、終了のホーンが鳴る。すなわち、ラストプレイである。白黒のセカンドジャージの帝京大が気力を振り絞る。SH滑川剛人がSO森田にパスを出し、ブルーの東芝の壁を破りにいく。

 PKをとる。滑川がすかさず、速攻をしかける。森田がクラッシュ。ラックから左へ。またPK。また速攻。滑川から森田へ。ラックを重ね、最後はFWの固まりがインゴールになだれ込み、やっとトライを返した。

 電光掲示板のタイムは「44分」となっていた。まさに意地のトライだった。森田が左目だけで笑った。右目は打撲で膨れ上がり、ジャージの右肩には血が染まっていた。

「いやあ、東芝さんは強かった。激しかった。でも自分たちの力は出し切りました」

 3月4日。埼玉・熊谷ラグビー場での日本選手権の準々決勝である。いまにも雪が降りそうな寒さと灰色の空だった。

 帝京大×東芝。はっきり言って、”ミスマッチ”である。ボクシングでいえば、ミドル級とヘビー級の試合のようなものか。戦前のファンの関心は勝敗ではなく、どこまで帝京大が健闘するかだった。