日本男子卓球のエース・張本智和が語るシングルスでのメダルへの思い ロス五輪に向けては「日本にいても強くなれる」 (3ページ目)
【五輪、世界選手権のシングルスでメダルを獲るために】
目下、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)を練習拠点とする張本は、ナショナルチームの合宿時には参加選手たちと、それ以外は主に吉山和希(岡山リベッツ)と練習することが多いという。吉山は今年1月の全日本選手権ジュニアの部でチャンピオンになった17歳の成長株で、今季、張本が入団したTリーグの岡山リベッツでチームメートでもある。
長年、エースに君臨する重圧は計り知れない。かつて同じ立場にあった日本卓球界のレジェンド・水谷隼(木下グループ)さんは「エースは勝って当たり前。負けたことがニュースになる」と語り、負けが込んでくると周囲が自分を非難する"敵"に見えたこともあったという。
水谷さんからバトンを受け継いだ張本もまた、その孤独と戦っている。最近は「努力が必ずしも報われるわけじゃない」と口にすることがあるが、これには続きがある。
「それは覚悟の上。報われなかったとしても努力したことに後悔はないです」
18歳で初めて出場した東京五輪。エースの自覚を持ってメダルを取りにいったパリ五輪。そして、2017年デュッセルドルフ大会から連続出場してきた、2年おきの世界選手権個人戦。その間、東京五輪では男子団体で銅メダル、2021年の世界選手権ヒューストン大会では混合ダブルスで早田ひな(日本生命)とのペアで銀メダルを獲得しているが、シングルスではまだメダルを手にしたことがない。
届きそうで届かない大舞台でのシングルスのメダル。世界選手権ドーハ大会では24歳の伊藤美誠(スターツ)が女子シングルスで銅メダルを獲得したが、東京五輪で混合ダブルス金、女子団体銀、シングルス銅の偉業を打ち立てた彼女でさえ、世界選手権のシングルスのメダルはようやく果たせた悲願なのだ。
「(世界選手権は)また2年後になってしまいますけど、自分が現役であり続ける限り挑戦できる。くじけずに挑戦したいです」
厳しい現実に何度跳ね返されても、張本は前を向く。これまでも、これからも。
今は少し肩の力を抜いて心を休めてほしい――。そんな声も聞かれるが、張本は次なる戦いの舞台WTT USスマッシュ(7月3~13日)に出場中だ。
WTTシリーズ最高グレードの大会で北米では初開催。ラスベガスの会場に22歳の「楽しく元気」な「チョレイ!」が響くのを楽しみにしたい。
【プロフィール】
■張本智和(はりもと・ともかず)
2003年6月27日生まれ、宮城県仙台市出身。卓球選手だった両親の影響で2歳の頃からラケットを握る。小学1年生の時に全日本選手権(バンビの部)で優勝し、以降、同大会で6連覇を達成。中学進学と共にJOCエリートアカデミーに入校し、シニアの大会に本格的に参戦すると、世界選手権では史上最年少となる13歳でベスト8に進出、中学2年時の全日本選手権でも史上最年少優勝を果たすなど、国内外の大会で華々しい結果を残した。2021年に行なわれた東京五輪では、男子団体の銅メダル獲得に貢献。戦型は右シェークドライブ型。世界ランキング4位。(2025年7月1日時点)。
【写真】全日本卓球で活躍した女子卓球の選手たち
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