卓球女子のパリ五輪代表選考レースが激化。早田ひなが首位独走も、全日本でライバルたちの巻き返しなるか (2ページ目)

  • 高樹ミナ●文 text by Takagi Mina
  • photo by T.LEAGUE/アフロスポーツ

 ところが、2022年になりコロナ禍が落ち着いてくると国際大会の開催も徐々に正常化し、日本の選手たちは国内選考会とTリーグ、国際大会の出場に追われて心身の負担を訴え始めた。

 世界選手権大会の代表選考も世界ランキングは度外視され、国内選考会での一発勝負で決まり、戸惑う選手も現れた。さらに、Tリーグに参戦していない実業団の社会人選手や学生は代表選考ポイントを得る機会が少なく「不利だ」という声もあがった。

 これらを受けて、「JTTAは選考基準を見直す必要があるのではないか」という空気が濃くなっていったが、大きなうねりになるには至らず。昨年末、現行の選考基準を踏襲することを協会が明言した。

【選考ポイントで首位独走の早田。国際大会での実績が自信に】

 異例のパリ五輪代表選考レースで、現在女子のトップを走るのは早田ひなだ。

 早田は2022年3月の第1回選考会「LION CUP TOP32」で優勝したのち、パリ五輪選考ポイント対象のTリーグ個人戦・ノジマカップでも優勝。さらに第2回選考会の「全農CUP TOP32福岡大会」で3位、第3回選考会の「全農CUP TOP32船橋大会」で2位という安定感でポイントを重ね、Tリーグの勝利点を合わせた選考ポイントを164に伸ばした。

 これを追う2位の伊藤美誠は、117.5ポイントで早田と46.5ポイント差。さらに3位の平野美宇は109ポイントで早田と55ポイント離れている。

●パリ五輪シングルス選考ポイント 上位8人の状況

1位 早田ひな 164p

2位 伊藤美誠 117.5p

3位 平野美宇 109p

4位 木原美悠 106p

5位 芝田沙季 102p

6位 長﨑美柚 97p

7位 石川佳純 87p

8位 佐藤瞳 69p

(※2023年1月9日現在)

 早田はなぜ2位の伊藤以下を大きく引き離すことができたのか。その理由は東京五輪直後のスタートダッシュにある。

 東京五輪を戦った伊藤、石川、平野は大仕事を終えてひと息ついたが、リザーブ(控え選手)として3人を支えた早田は東京五輪に刺激を受け、大会が終わるとすぐさまパリ五輪代表選考に向けた強化に着手。実戦における対応力の幅を広げる練習を始めた。

 当時の早田は、伊藤、石川、平野に比べて国際大会の実績に乏しかったが、2カ月弱の強化の甲斐あって、東京五輪の翌月のアジア選手権ドーハ大会(2021年9月28日〜10月5日)で女子シングルス、混合ダブルス、女子団体で金メダルを獲得。3冠達成の快挙を成し遂げた。

 さらに11月の世界選手権ヒューストン大会(個人戦)でも女子シングルスおよびダブルス、混合ダブルスに出場。ダブルス2種目で銀メダルに輝き自信をつけた。この時期の成長が、2022年の早田の飛躍につながったことは間違いない。

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