全日本卓球での東京五輪組の敗退は「波乱」ではない。男子のアラサーたち、女子の黄金世代のひとりも進化
今年の全日本卓球選手権は、伊藤美誠が女子シングルスで2020年大会の女王・早田ひなを4ー1で下し、3年ぶり3度目の優勝。男子シングルスでは明治大学の戸上隼輔が、松平健太に4ー2で勝利して初優勝を果たし、7日間にわたる熱戦に幕を下ろした。
両王者は女子、男子それぞれのダブルスでも頂点に輝き、2冠を達成。早田もシングルスの栄冠は掴めなかったものの、女子ダブルスでは伊藤とともに4連覇。張本智和とのペアで出場した混合ダブルスでも初優勝を成し遂げ、昨年後半から破竹の勢いで好成績を残している。1月30日に発表された最新の世界ランキングでは、前回ランク16位から自己最高の6位に大きくランクアップし、初のトップ10入りを果たした。
結果だけを見れば、東京五輪メンバーや"パリ五輪世代"が順当に勝ち上がった印象もある。だがそれ以上に、日本代表選手の影に隠れた実力者や、経験値豊富なベテランの存在感も強く印象に残った大会でもあった。
【男子シングルスベスト8に"アラサー"5人】
男子シングルスでは、6回戦で28歳の吉村真晴が張本を4ー2で破り、最終的には6年ぶりの4強入り。張本相手に「1試合も勝ってない。思い出したくないくらい負けていますね」と話すほど相性が悪かったこともあり、この結果は大きな話題を呼んだ。
とはいえ、吉村といえば2016年リオ五輪の男子団体銀メダリストで、翌年の世界選手権の混合ダブルスでは石川佳純と組んで金メダルを獲得。全日本選手権でいうと、2012年大会、当時18歳で水谷隼の大会6連覇を阻んで優勝した経験もある。
張本撃破にも「波乱」という言葉は似つかわしくない実力者だ。東京五輪出場を逃し、代表からも遠ざかってはいるが、2024年パリ大会を見据えていい形で再スタートを切った。
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