水谷隼の兄貴分がTリーグのため奮闘。「卓球をつまみのような存在へ」 (3ページ目)

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru

――T.T彩たまのチーム会見で、岸川選手が「東京五輪を目指して頑張っている隼のためにも、強いライバルチームでありたい」と語ったとき、その絆の深さを感じました。

「岸川の言う通りです。隼もロシアリーグに残る選択もあったと思うけど、彼自身、『日本のプロリーグで強くなって東京でメダルを獲りたい』という気持ちになってるんじゃないでしょうか。その思いに応えるためにも、日本のスター軍団である木下の対抗馬になるような強い選手をリーグに連れてこないと、彼らの強化につながらない。僕はT.T彩たまの人間だけど、結局は日本の卓球界のレベルが上がっていくことが一番だと思っていますから。そしてもうひとつ、僕には大きなモチベーションがあるんです」

――それは、どういうものですか?

「日本人選手で初めてブンデスリーガでプレーしたのは、松下浩二チェアマンです。浩二さんが勇気をもってドイツへ行ってくれたから、僕や岸川、隼たちが後に続くことができた。浩二さんは、新たな道を切り開いてくれた日本卓球界のレジェンドなんです。もし、Tリーグが成功しなかったら、その批判は浩二さんに集中するでしょう。絶対、そんな状況に追い込んではいけないんです。浩二さんを男にしたい。そんな思いも、僕の心の底にあります」

――その松下チェアマンにもお聞きしたのですが、選手強化の視点からいうと、ここ数年で男女とも「打倒・中国の一番手」と目されるようになってきました。順調に強化が進んでいることが、逆にプロリーグへの求心力を弱めている要因になっていないでしょうか。

「確かに(サッカーの)Jリーグや(バスケットの)Bリーグが発足したときと比較すると、状況は逆かもしれません。でも未だに、中国を越えて世界の頂点には立っていないんです。金メダルを手にしていない限りは、まだまだ強くならないといけないし、じゃあ金メダルを獲るためにどうすればいいかとなったときに、日本国内にプロリーグが必要なんです。

 どうしても日本の卓球界は『もう強くなってメダル常連国になったから、このままでいいでしょう』という雰囲気になりがちです。浩二さんももちろん、金メダルを獲るためにリーグを作ろうとしたので、周囲の人たちとの間にずれが生じてきているところはあるかもしれません」

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