卓球・丹羽孝希「リオの銀メダルが思ったより嬉しくなかった理由」 (2ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro  露木聡子●写真 photo by Tsuyuki Satoko


「5月に合宿でやり込んでいたのに試合では負けたんです。これはもう、今大切なのは練習量じゃないなって。卓球をやらされている感覚もあったので、卓球をやりたくなるまで休もうと。休んでいる間、もちろん筋トレなどのトレーニングはしていたんですけど、ラケットは一切握りませんでした」

 不安はなかったかと聞くと、丹羽は表情を崩さず答えた。

「オリンピックまで1ヶ月だったんで、ここから劇的に伸びることはないと、腹をくくって割り切りましたね。インカレがなかったら、もう少し休んでいたかもしれません」

 そのインカレで、丹羽率いる明治大は優勝。丹羽自身も復調の兆しを見せた。

「疲れも取れ、変な癖も抜けていたので、休養は確実にプラスに働いたと思います。何より、卓球が楽しいって思えたことが大きかったです」

 インカレ後、丹羽は異例とも言える練習試合を一切しないままリオに乗り込む。

「練習試合と試合は全然違うんで。練習試合だけすごい強い人もいます。僕は練習試合してもたぶん負けるんで。負けると自信が揺らいだり、プレーに迷いが生じてしまう。勝ちたい気持ちが強すぎて、プレーに変な癖がついてしまう可能性もある。だったらと、練習試合はやりませんでした。インカレで勝った印象のまま五輪に挑もうと思ったんです」

 リオは丹羽にとって、ロンドンに続き2度目の五輪。「オリンピックには、他の大会にはない独特の雰囲気がある」と言う。

「世界選手権などとは雰囲気も違います。やっぱり4年に1度だけなので。自然と気持ちも高ぶっていきましたね」

 シングルス2回戦から登場した丹羽は、セグン・トリオラ(ナイジェリア)を4-2、続く3回戦のシュテファン・フェガール(オーストリア)を4−1、4回戦は黄鎮廷(香港)を大接戦の末、4-3で下してベスト8に進出した。

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