【卓球】松下浩二のリオ展望「水谷隼は世界王者になれる才能」 (2ページ目)

  • 水野光博●構成 text by Mizuno Mitsuhiro  photo by AFLO

 唯一の懸念材料としては、彼が負けるときのパターンに陥らないこと。誰もが「勝ちたい」と必死になるのが、五輪です。たとえ格下の選手であっても、想像以上に好調だったり、勢いがある場合は多々あります。そんなときに動揺し、「こんなはずじゃなかった」と思っていると、立て直す間もなく押し切られてしまいます。水谷選手が敗れる場合、そういったケースが非常に多い。ですから、想定外の展開になったとしても受け身にならず、どう気持ちを切り替えるか、どう戦術を変更するかを、あらかじめ準備しておけるかがポイントになるのではないでしょうか。

 私は正直、水谷選手は世界チャンピオンになっていいポテンシャルを持っていると思っています。その才能を開花しきれていないもどかしさがありますが、それは水谷選手本人というより、周囲の環境作りの面で中国に水をあけられている結果だと思っています。現に水谷選手は、ジュニア時代には負けなかった中国人選手に追い抜かれているのですから。

 中国がなぜ50年間も世界の頂点で居続けられるのか? それは、競技人口の多さはもちろんですが、それだけが理由だとは決して思いません。中国は、今日までに120~130人もの世界チャンピオンを輩出していますが、それはつまり、素材として突出していなくとも、世界の頂点に育て上げるシステムやノウハウを持っていると考えたほうが自然ではないでしょうか。

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