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【Bリーグ10年目の開幕】沖縄をもっと元気に!――琉球ゴールデンキングスが"常勝"であり"挑戦者"であり続ける理由 (3ページ目)

  • 長嶺真輝●取材・文 text by Nagamine Maki

【アリーナの熱が生む巨大なホームアドバンテージ】

 琉球を語るうえでは、Bリーグ屈指の熱狂的なファンの存在に触れないわけにはいかない。

 以前は高校の県大会決勝でコート脇に人が幾重にも詰め掛けていたほど、沖縄はもともとバスケットボールが盛んな地域である。戦後、27年間にわたって米軍統治下に置かれ、NBAを擁するアメリカのカルチャーが根づいている影響か、街中にバスケットコートも多い。2007-08シーズンに琉球が地元初のプロチームとしてbjリーグに参入し、強豪にのし上がっていくと、比例してファンの裾野も広がっていった。

 そして、南国の島に渦巻くバスケ熱をさらに可視化したのが沖縄サントリーアリーナだ。日本初のバスケットボール観戦に特化したアリーナとして2021年に誕生した。専用のロッカールームや練習用のサブアリーナも完備した琉球のホームコートである。

 収容能力は8000人超。すり鉢状に配置された客席、中央に吊るされた大型ビジョン、エンターテインメント性を高める音響と照明......。非日常空間が増幅させるファンの熱は、巨大なホームコートアドバンテージを生む。2023-24シーズンのクラブ決算では、チーム経営の"自力"を示す入場料収入は琉球が3年連続トップ。10億円台に乗ったのも唯一だった。「夢のアリーナ」構想による地域活性化を掲げるBリーグの理念を、先んじて具現化していると言っていい。

 クラブの活動理念は「沖縄をもっと元気に!」。選手たちもよく「沖縄のために」と口にする。島全体がチームを応援し、チームもまた、島に誇りを返す──この循環こそが、琉球を特別なクラブにしている。「常勝チーム」「挑戦者」という相反する呼称がいずれも似合う不思議な二面性も、ファンを惹きつけてやまない理由だろう。

 昨季に続き、Bリーグ、東アジアスーパーリーグ(EASL)、天皇杯を含めた3つのタイトル奪取に挑む。海外でのアウェー戦も含めた厳しい日程だからこそ、先に目を向けすぎることはない。ローとともにキャプテンを務める小野寺は「一日一日を大切にしてステップアップしていきたい。各タイトルで優勝をするため、みんなが同じ方向を向いて戦っていきたいです」と話し、地に足をつけた歩みを見据える。

 Bリーグ史の中で華々しい実績を積み上げてきた琉球が、現行リーグで最後となる2025-26シーズンにどのような戦いぶりを見せるのか。ちなみに、bjリーグのラストイヤーとなった2015-16シーズンは優勝で締めくくっている。後世まで語り継がれるであろう節目のタイトル奪取に、再び挑む。

著者プロフィール

  • 長嶺真輝

    長嶺真輝 (ながみね・まき)

    沖縄在住のスポーツライター。沖縄の地方新聞社の記者時代に東京五輪、Bリーグを担当。現在はバスケットボールや高校野球を中心に各競技を取材し、雑誌やWEB媒体などで記事を執筆。「日本バスケの革命と言われた男」(双葉社、沖縄書店大賞優秀賞)の取材・文担当。

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