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バスケ男子日本代表「比江島慎の後継者」は誰? 富永啓生に突きつけられた「vs世界の強豪」という壁 (5ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

【地味な仕事も必死に遂行する姿勢】

 サマーリーグのワンシーン。ペイサーズはタイムアウト中、富永に3Pを打たせるためのプレーを指示した。「ドロー」とはヘッドコーチがボードに作戦を「描く」という意味で、富永の言う「重力」とはディフェンダーを引き寄せることを指している。グアム戦後の発言は、自身の3Pがそれを生み出していることを理解している証だ。

 日本代表においても、富永はその「重力」をいかんなく発揮できている。少しの間がありさえすれば、富永は3Pを放つことができる。その重力によって相手が間違いなく引き寄せられてしまう様子は、滑稽にすら映ることもある。

 アメリカでの富永は、出番のもらえない我慢の日々を送ってきた。その経験によって、ひと皮むけた印象も強い。3Pという絶対的な武器だけに頼るのではなく、泥臭くディフェンスしてリバウンドを奪いにいくといった地味な仕事も必死に遂行しようとする姿勢は、今回のアジアカップを見ていても伝わってくる。

 もっとも富永も、日本が97-73と大敗してアジアカップ敗退となった8月12日の準々決勝進出決定戦レバノン戦では7得点に終わっている。富永にボールを持たせないような守りをレバノンが徹底してきたために、放った3Pはわずか3本で1度も長距離砲を決めることができず終戦となった。

 しかしそれでも、シュート機会を作りださねば、彼の存在価値は薄れる。チームとしても、富永に打たせるためのプレーを考えていく必要があるだろう。

 比江島の後釜は、そう簡単に見つかるものではないかもしれない。数人の後継候補はいるが、現状では富永が最有力であるように見受けられる。ただこの先、その序列が変わる可能性はまだまだあるだろう。日本代表としても「これ」という確たる者は是が非でもほしいところだ。

<了>

著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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