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NBA伝説の名選手:アレン・アイバーソン 「史上最も小柄なMVP」は「The Answer」であり続けた (3ページ目)

  • 秋山裕之●文 text by Akiyama Hiroyuki

【コート内外で発揮したインフルエンサーとしての存在感】

アイバーソンは、オフコートでも大きな影響を与えた photo by Getty Imagesアイバーソンは、オフコートでも大きな影響を与えた photo by Getty Images 振り幅の激しいクロスオーバードリブルや瞬時にトップスピードへ切り替えるヘジテーションで相手を抜き、そこから繰り出す多彩なレイアップ、あるいはジャンパーに3ポイント、フリースローで点を積み重ねてきた。NBAキャリア14シーズンで歴代9位の平均26.66得点、同9位の2.169スティール、同4位の41.12分出場を記録。得点王に4度、スティール王にも3度立ち、オールスターに11度、オールNBAチームに7度名を連ねてきた。

「(優勝)リングがないと意味がない。それが何よりも重要なんだ。そこが俺と偉大な選手たちを引き離す唯一の要素だと思う。偉大な選手たちは、勝ってきた。だが俺はそうじゃない」

 本人がそう口にしたように、アイバーソンはNBAの頂点へ立てずにコートから去った。また、練習嫌いで遅刻や無断欠席をしたり、観客への暴言や運転する車のスピード違反の際に拳銃と大麻が押収されるなど、これまで数多くのトラブルを起こしてきた。

 とはいえ、人一倍大きなハートの持ち主は、ボールを持った時のクイックネスが尋常ではなく、無尽蔵のスタミナと不屈のメンタリティも備わっていた。大柄な相手と衝突してコートへ倒れても、必ず起き上がって戦い続ける姿は、会場で応援していた観客だけでなく、画面越しで観ている人たちの心をも揺さぶってきた。

 また、ヒップホップの世界から飛び出してきたようなファッションで絶大な影響を与えた。1年目の途中から披露したコーンロウ(編み込み)は現役選手たちへ浸透し、当初は右ヒジの腫れを緩和するために着用したアームスリーブが今では選手たちのファッションの一部になるなど、バスケットボール界へ一大ブームを巻き起こしたことも見逃せない。

 引退後、アイバーソンが着用した背番号3はシクサーズの永久欠番となり、今年4月にはその功績が称えられ、銅像もお披露目。2016年にバスケットボール殿堂入りし、2021年には75周年記念チームにも選ばれた。

 厳しい生活環境から這い上がり、NBAのスーパースターとなったアイバーソンは、コートですべてを出し尽くしてきた。仮にチャンピオンリングを手にしてなくても、間違いなく"偉大な選手"のひとりであり、稀代のカリスマと言っていいはずだ。

【Profile】アレン・アイバーソン(Allen Iverson)/1975年6月7日生まれ、アメリア・バージニア州出身。1996年NBAドラフト1巡目1位指名
●NBA所属歴:フィラデルフィア・76ers(1996-97〜2005-06)―デンバー・ナゲッツ(2006-07途〜2008-09途)―デトロイト・ピストンズ(2008-09)―メンフィス・グリズリーズ(2009-10)―フィラデルフィア・76ers(2009-10)
●NBAファイナル進出1回(2001)/シーズンMVP1回(2001)/オールNBAファーストチーム3回(1999、2001、2005)/新人王(1997)
●主なスタッツリーダー:得点王4回(1999、2001、2002、2005)/スティール王3回(2001〜2003)
●五輪代表歴:2004年アテネ大会(3位)

*所属歴以外のシーズン表記は後年(1979-80=1980)

著者プロフィール

  • 秋山裕之

    秋山裕之 (あきやま・ひろゆき)

    フリーランスライター。東京都出身。NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに転身し、現在は主にNBAのライターとして『バスケットボールキング』、『THE DIGEST』、『ダンクシュート』、『月刊バスケットボール』などへ寄稿している。

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