NBA伝説の名選手:スティーブ・ナッシュ 奇想天外なパス捌きと正確無比なシュート力で一時代を築いた名司令塔 (2ページ目)

  • 秋山裕之●文 text by Akiyama Hiroyuki

【マブスで出場機会を生かし一気に開花】

 ロックアウトのため、通常の82試合から50試合の短縮となった1998-99シーズン。マブスは19勝31敗(勝率38.0%)と低迷するも、ナッシュは先発の座を手にした。さらに、当時ルーキーだったノビツキーと意気投合してワークアウトに励み、213cmの高さと機動力を兼備する男から点を取る術を磨いていき、2000-01シーズンにブレイクする。

 マブスはノビツキー、ナッシュ、マイケル・フィンリー(元マブスほか)の三本柱で攻撃型チームと化し、ウェスタン・カンファレンス5位の53勝29敗(勝率64.6%)の成績を残して11年ぶりのプレーオフ進出を飾ると、2002-03シーズンにはカンファレンス決勝まで勝ち進む強豪チームへ成長した。

 その間、ナッシュとノビツキーは切磋琢磨の甲斐あってオールスター入りするほどの実力者となったのだが、2004年夏にFA(フリーエージェント)となったナッシュが古巣サンズへ帰還したことで魅惑のデュオは解散。両選手は別々の道を歩むことになる。

 ともあれ、この移籍がナッシュのキャリアに、さらなる輝きをもたらすことになる。2003-04シーズン途中にマイク・ダントーニHCが指揮官へ就任したサンズは、ウェスト13位の29勝53敗(勝率35.4%)と低迷したが、アマレ・スタッダマイヤー、ショーン・マリオン(いずれも元サンズほか)といった若手がおり、チームを束ねる"リーダー格"を求めていた。

 そうして翌2004-05シーズン、カナダ出身PGを迎えたサンズは"7秒以内にシュートまで持ち込む"オフェンスで飛躍。アマレやマリオンが持ち前のスピードで圧倒し、シューターたちが外から効果的に射抜くスタイルでリーグ最高の62勝20敗(勝率75.6%)という圧巻の成績をマークした。

 ナッシュは平均15.5得点にリーグトップの11.5アシストを残してMVPに選ばれると、翌2005-06シーズンも得点源のアマレが不在のなかで、同18.8得点、10.5アシストを記録。54勝28敗(勝率65.9%)とチームもディビジョン優勝に導き、2シーズン連続のMVPに選出された。

「スティーブは、ディフェンスを細かく分析していたんだろうね。彼は常に誰がオープンなのか、どこにいるのか、どこでボールを欲しがっているのかを察知していた」

 アマレがそう絶賛するほど、ナッシュのコートビジョンは群を抜いていて、サンズ後期の在籍8シーズンのうち5度もアシスト王に輝いた。その間、サンズはファイナルには届かなかったが、カンファレンス決勝に3度勝ち進むなど、リーグを沸かせたチームのひとつとなった。

 2012年夏、ナッシュはトレードでレイカーズへ移籍。コービーやパウ・ガソル(元レイカーズほか)らと戦うも、ケガに苦しんだこともあり、2015年3月に現役引退。

 NBAキャリア18シーズンで、ナッシュは通算1217試合に出場してキャリア平均14.3得点、3.0リバウンド、8.5アシストをマーク。通算7度の平均2ケタアシストはクリス・ポール(現サンアントニオ・スパーズ)と並んで歴代3位タイで、通算1万335アシストで同5位に入っている。

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