馬場雄大が泣いた日から半年 頼れる男になった28歳は「次、勝っても、泣かない」 (3ページ目)
馬場雄大は間違いなくパリ五輪のキーマンとなる photo by ©FIBAこの記事に関連する写真を見る
【0勝8敗の屈辱を乗り越えて手に入れた自信】
今シーズン、馬場は5年ぶりにBリーグへの復帰を果たしている。これも、ホーバスHCによる「キャリアのなかの今の段階で、彼にはBリーグで中核選手である必要がある」との助言に従った部分もあった。
再び、半年前のワールドカップ。
目からあふれる涙をこらえきれなかったのは、馬場だけではない。渡邊雄太(SF/メンフィス・グリズリーズ)もそうだった。
ふたりは2019年ワールドカップと2021年の東京オリンピックでの「0勝8敗」を経験していた。世界大会で1勝にとどかないことが、これほどまでに悲痛であるということを、彼らの涙が示した。
フィンランド戦での勝利で勢いを得た日本は、ここからさらにふたつの勝利を積み上げて、パリオリンピックへの切符を手にした。
最終戦のカーボベルデ戦後の馬場の顔には、穏やかな笑顔が広がっていた。
「なんか緊張の糸が切れたというか、ずっと勝てていなかったぶん、世界大会で勝つということがこんなにうれしいんだということが湧き上がってきたんです。自分たちが強くなっているということを再確認できましたし、僕たちは今まで以上に信じる姿勢でいることができたので、(勝てた理由は)そこかなと思います」
無論、今回の中国戦での馬場のパフォーマンスは、あくまで1試合でのものでしかない。富樫勇樹(PG/千葉ジェッツ)などは常々、「世界大会に出てくるようなチームのレベルは、またアジアとはまったくの別もの」だと強調している。日本はパリオリンピックでベスト8進出を目標に掲げるが、そこでは「まったく別もの」レベルの相手と対峙し、打ち破る必要がある。
では、チームの中心選手のひとりである馬場が、そこで強豪を倒すためにチームを引っ張る意気込みなのかといえば、そうではない。体躯や身体能力で世界と伍することが難しい日本は、相手に合わせるのではなく、あくまで自分たちのバスケットボールを貫きながらチームとして戦うことがこそが勝利への道を切り開くという認識を共有している。
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