井上雄彦×渡邊雄太スペシャル対談02 コミックス31巻と渡邊少年の『SLAM DUNK』秘話 (4ページ目)

  • 伊藤 亮●取材・文 text by Ito Ryo
  • 細野晋司●撮影 photo by Hosono Shinji

井上 雄太君は1994年生まれだっけ? ということは『SLAM DUNK』の連載もわりと大詰めな感じの頃......。

渡邊 僕が読み始めた頃には、連載はもう終わっていまして。

井上 もちろんそうだよね。連載中はまだ赤ちゃんだもの。

渡邊 僕は小学生になって、字がやっと読めるようになってきたくらいの時に初めてコミックスを見ました。お父さんが家に揃えてくれていたので。

井上 お父さん......ありがとうございます。

渡邊 僕はまだ幼くて、文字をそんなに読めなかったので、最初に(ジャンプコミックスの)31巻から読み始めたんですよ。それだけでおもしろいと思って。

井上 え、(最終巻の)31巻から?

渡邊 はい。31巻は文字が少なかったので。

井上 ああ、文字を入れなくてよかった(笑)。

渡邊 で、そこから1巻からちょっとずつ読み始めていって、以降は何周したかわかりません。

井上 お父様、お母様も超有名なバスケ選手だったけど、別に「バスケをやれ」という感じではなかったということ? お姉ちゃんがバレーをしていたということは。

渡邊 いえ、両親はお姉ちゃんにバスケをずっとやってほしかったんです。僕の場合は自然な流れで始めていったんですけど、お姉ちゃんは泣きながら「絶対バスケなんかやりたくない!」と言っていて。

 なのに、ある日、朝起きたら急に「私、バスケット始める」と言い出して。『SLAM DUNK』を読んで「それまでのバスケ嫌いはどこいった?」というくらい気持ちが変わったらしく(笑)。本当に『SLAM DUNK』で姉の人生は大きく変わったんです。

井上 そうなのか......。

渡邊 まだあまり文字も読めなかった自分が、31巻を初めて見た時の、あの......途中からセリフなどがなくなって、絵だけになった世界に完全に入り込んじゃった記憶ははっきりあります。

 文字がないのに、そのページで止まってしまうんですよ。じっくり見て、ページをめくってまたじっくり見て......。ずっと絵を追うしかできなかったからなんですが、吸い込まれていく感じがありました。

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