バスケ日本代表は「富樫勇樹のチーム」 それでもW杯出場の12人入りに「危機感はある」と本人が強調するワケ (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • 加藤誠夫●撮影 photo by Kato Yoshio

【W杯予選ラウンドは死の組】

 アジアレベルならば、小柄なPGをふたり選出するのもありかもしれない。しかし、ワールドカップのような「対世界」の場となれば、話は違う。長らく代表に身を置き、2021年の東京オリンピックも経験している富樫は、それを身をもって知っているのだ。

「やっぱりアジアのレベルと世界のレベルっていうのは、僕は違うものだと思っています。実際、(東京)オリンピックでもそうだったように(ワールドカップ・アジア地区予選の)ウインドウではずっとスタメンでやっていましたけど、大貴や、今回なら西田(雄大/シーホース三河/190cm)が1番(PG)ができる選手。

 オリンピックでは僕だけが160〜170cmくらいの選手でしたが、今回は僕と河村のふたりが候補でいるということで、そこ(小柄な選手をふたりも選ばない可能性)に対する危機感はめちゃくちゃあります」

 富樫は「危機感」の部分を強調しながら、そう話した。

 東京オリンピックの約1カ月前、篠山竜青(PG/川崎ブレイブサンダース)が代表候補から外されたことは、日本のバスケットボールファンたちを大いに驚かせた。2019年のワールドカップで日本代表が全敗したことを受けて、167cmの富樫と178cmの篠山、身長180cmに満たない選手をふたり選出しないことを、ラマスHCは決断したのだった。

 富樫はその時のことを、よく覚えている。そして、身長だけがすべてではないという反骨心は心に秘める一方で、客観的に考えた時に小さなPGを複数入れることのリスクは、彼自身もよくわかっている。

 また、晴れて12名のメンバーに選ばれたとしても、当然そこがゴールではない。日本はワールドカップの予選ラウンドで、ドイツ、フィンランド、オーストラリアという強豪との対戦が待ち受ける。多くの識者らが「死の組」と呼ぶグループで戦うなかで、日本はアジアの出場国でトップの成績を残し、来年のパリオリンピックへの切符を掴むことが最大の目標となる。

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