富樫勇樹28歳167cmと河村勇輝21歳172cm。バスケ日本代表「ふたりのユーキ」の正ポイントガード争い (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

河村が富樫を上回っている点

「両方ですね」

 河村というスター候補がゆくゆくは自身のライバルになるという危機感があるのか、それともそういう存在が出てくるのが楽しみかと問われた富樫は、まずそう口にしてから続けた。

「自分よりも下の世代の選手を見ていてワクワクするのは初めてと言っていいくらいですし、危機感じゃないですけど、彼が大学を卒業する時など、また争わないといけないのかなと。ライバルという意識も持ちながらも、そういう選手が出てきてすごく楽しみです」

 その後、河村は約2カ月後に東海大へと進学。翌年以降も引き続き、特別指定選手として横浜BCでプレーしてきた。だが今年3月、22年度をもって同大からの中退と、プロ選手への転向を発表する。

 ことあるごとに「将来は日本代表の正PGになりたい」と口にしてきた男は、最大の目標である2024年パリオリンピックからの逆算で、思いきった決断をしたのだ。

 河村が正式にプロ選手としてのデビューを果たすのは2022−23シーズンではあるものの、代表入りへ向けて少しでも早くプロに転向し、バスケットボールに専念するという判断は、今のところ正解だったと言える。

 そして自身が三遠在籍時に「憧れで目標である選手」と話していた富樫に挑戦するべく、河村は今、同じ土俵にあがってきた。

 それでも、日本代表PG陣における現状の"序列"は、東京オリンピックにも出場し国際経験の豊富な富樫が一番上にある。アジアカップでは富樫が全5試合で先発し、上記のとおり富樫のほうがより多い出場時間を得ていることからも明らかだ。

 しかし、それはあくまで今の時点での話。この先はどうなっていくかは未知であり、見ているものからすれば楽しみが増す。

 ホーバスHCの標榜するバスケットボールスタイルは、世界と比べてサイズのなさを補うためにトランジションで走って攻撃回数を増やし、かつ3Pを多用することで得点効率でも相手を上回る、といったものだ。

 現状で河村が富樫を明確に上回っているところがあるとすれば、河村のほうが肉体的に強くしつこくディフェンスができるところで(アジアカップでの平均スティール数は富樫0.4に対して河村2.2だった)、そこに対する同HCの評価は明確に高い。だが、"パスファースト"の河村にはまだ富樫ほどの得点力は備わっておらず、3Pシュートにも課題を抱えている。ゲームコントロールの部分でも富樫に軍配があがるといったところだ。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る