2021.06.14

クールな富樫勇樹が感情爆発。4度目の正直で叶った優勝までの軌跡

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 時計が「0」となって終了のブザーが鳴ると、選手がなだれ混んできた。千葉ジェッツふなばしの面々が、コート上で抱擁する。雄叫びをあげる。

 富樫勇樹の姿も当然、その中にあった。普段はクールな表情であることが多い印象のある男の、笑顔が弾けた。

「3年前、2年前と、ここ横浜アリーナでのファイナルで敗れてから、この瞬間のためにがんばってきたので、チームメイトを誇りに思います」

 試合後の会見で、富樫はそう振り返った。

キャプテンとして千葉を率いた富樫勇樹の今季を振り返るキャプテンとして千葉を率いた富樫勇樹の今季を振り返る この記事に関連する写真を見る  Bリーグファイナルの舞台にはそれまで2度立ち、いずれも敗れていた。そして3度目の今回、男はようやく賜杯を手にした。

 bjリーグ時代にまでさかのぼれば、富樫にとって"4度目の正直"だった。

 アメリカのモントロス・クリスチャン高校を卒業後、日本へ戻った富樫は2012−13シーズン、bjリーグの秋田ノーザンハピネッツへ加入する。一躍リーグを代表するトップ選手となり、翌年にはチームをファイナルまで導いた。だが、琉球ゴールデンキングスに敗れ、準優勝に終わった。

 NBAを目指し、下部リーグのDリーグ(現在のGリーグ)へ挑戦した時期もあった。2018−19シーズンにはBリーグMVPを受賞。オールスターゲームやベスト5にも、当たり前のように選ばれる。日本代表の常連で、今夏の東京五輪への出場の可能性も高いだろう。

 なのに、リーグ優勝だけには手が届いていなかった。小柄(167cm)もあっていつまでも若い印象の富樫も、もう27歳になっていた。

 もちろんチームスポーツだから、ひとりの力だけで勝つには限界がある。ただ一方で、リーグタイトルはチームの司令塔となるPGとしての力量を示すものであるから、是が非でもほしいものだった。

 強い決意を胸に臨んだ2020−21シーズン。チームは順調に勝利を重ねた。しかしシーズン終盤、リーグに暗雲が立ち込める。新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの球団が試合の延期や中止に追い込まれ、千葉も陽性者が発生したことで3月末から4月半ばまで活動が停止した。