八村塁、プロ1年目の危機感。「3Pを打てないとNBAに残れない」 (2ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

 シーディングゲーム2試合目は、順位争いをしているブルックリン・ネッツが相手だった。どちらのチームにとっても負けられない重要な一戦だ。その前日、ネッツ暫定HCのジャック・ボーンは、ビールやベルターンズが抜けたウィザーズで誰を警戒するのかを聞かれた。

「前とはまったく違うチームだから、詳しく調べなくては」と言いながら、ボーンHCはツラツラと5人のウィザーズ選手の名前と、その選手の役割をあげた。しかし、そのなかに八村塁の名前は出てこなかった。

 八村を評価していなかったからではない。むしろ、その逆だった。

 ブルックスHCからオフェンスの一番手と指名され、シーディングゲーム初戦でフェニックス・サンズ相手に21点を記録した八村の名前を、ボーンHCはわざと口にしなかった。どうやら、手のうちを見せないためだったようだ。

 その証拠に、試合になるとネッツのディフェンスは、八村に対して徹底的なダブルチームのディフェンスを仕掛けてきた。ボールを持つと周りにディフェンス陣を集め、得意なエリアでのシュートを打たせなかった。

 結果、この試合の八村はわずか6本しかシュートを打てず、9得点どまり。ウィザーズは接戦を落とした。

 試合後、八村は「相手のマークがすごく厳しかった。2人、3人が寄ってきて、僕がドライブしたらヘルプが待っていた」と、苦戦の理由を語った。

 NBAに入ってから、ここまで徹底して守られたのは初めての経験だ。

 その9日後に対戦したミルウォーキー・バックスは、別の方法で八村の弱点を晒してきた。もともとインサイドを固めたディフェンスを敷くバックスだが、3Pシュートが得意ではない八村に対し、外からのシュートは打たせて構わないとばかりに極端にゴールから八村を離して守っていた。

 完全にノーマーク状態になった八村は、それでも最初のうちは3Pシュートを打つことを躊躇していた。コーチやチームメイトたちから「思い切って打ってこい」「あんなに練習していたじゃないか」と励まされ、途中から吹っ切れたようにシュートを打った。

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