ケビン・ガーネットはなぜ「ひっそりと引退表明」せざるを得なかったのか

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • photo by Getty Images

 NBAのトレーニングキャンプ開始を数日後に控えた9月23日、ケビン・ガーネットが1本の動画をインスタグラムに投稿した。

 出だしは真っ暗な画面で、ケビン・ガーネットの「ただ、ただ感謝の気持ちだ」という声が聞こえる。間もなくフードをかぶった私服姿のガーネットが、ひとりで誰もいないターゲット・センター(ミネソタ・ティンバーウルブズの本拠地)のコートを訪れる様子が映される。ゴール下でリングを見上げ、ゆっくりとコートを後にする。

40歳のケビン・ガーネットはひっそりとユニフォームを脱いだ40歳のケビン・ガーネットはひっそりとユニフォームを脱いだ「みんなに、みんなの愛情に感謝している。みんなが自分のことをこんなに愛してくれるとは思ってもいなかった。それが現実になったことは、特別なことだった。

 俺たちは大丈夫だ。簡単だとは思わないが、今のところうまくいっている。この先を楽しみにしていてくれ」

 映像は、ユニフォームを着たガーネットの後ろ姿に変わり、『Farewell(さようなら)』、そして『Thank you for the journey(旅に付き合ってくれてありがとう)』の文字──。

 これが、ガーネットの引退声明だった。記者会見もなく、取材を受けることもなく、インスタグラムに投稿された短い動画のなかでも、一度も『引退』という言葉を使うことなく、現役引退を発表した。

 本人が語らないので想像するしかないのだが、ガーネットの最後はほろ苦いものだったのではないだろうか。NBAで21年というキャリアは、長さも、その中身も十分にすばらしいものだった。

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