【NBA】コービーがジョーダンから学んだ「引退後の生き方」

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

数年前の鋭い動きを取り戻し、好調を維持している34歳のコービー・ブライアント(左)数年前の鋭い動きを取り戻し、好調を維持している34歳のコービー・ブライアント(左) 今シーズンのコービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ)に、17年前のマイケル・ジョーダンの姿が重なって見えることがある。当時、1995-96シーズンのジョーダンは32~33歳で、1度目の引退から戻ってきて2シーズン目。オフの間に野球体型となっていた身体をバスケ体型に戻し、心身ともに一番いい状態だったシーズンだ。

 一方、コービーは現在34歳。2年前の夏にドイツへと渡り、慢性的に悪かったひざを治療したことで、今年は動きに鋭さが戻ってきた。2月5日のブルックリン・ネッツ戦ではジェラルド・ウォレスとクリス・ハンフリーズの上から、そして3月3日のアトランタ・ホークス戦ではジョシュ・スミスの上から、ともに身長2メートル以上の相手を苦ともせず、ダンクを叩き込んだ。まるで、「時計の針を数年間、戻したのではないか」と思えるようなプレイを見せている。

 最近、コービーのお気に入りのニックネームは、『vino』だという。イタリア語で、ワインのことだ。ワインと同じように、自身も月日を重ねるごとに良くなっていくことを示唆している。たしかに、34歳という年齢であれだけのプレイを披露するのは、決して簡単なことではない。食べるものを制限し、早朝のワークアウトや氷風呂など、高いレベルを維持するために必要なことを、日々続けている結果だ。

 その一方でコービーは、引退の日が近いことを否定しない。その話題を避けるのではなく、むしろ引退が近いからこそ、今を楽しみ、自然体で周囲に語っている。

 引退といえば、最近50歳になったジョーダンが雑誌の取材を受けて、興味深いことを言っていた。現在、シャーロット・ボブキャッツの筆頭オーナーを務めているジョーダンだが、今でも己の闘争心をもてあまし、「現役のころに戻れるのなら、全財産を投げ出してもいい」とまで言っているのだ。

 コービーは近年、「(現契約の切れる)来シーズン後に引退する可能性は高い」と公言している。だが、ジョーダンの引退後の心境を聞いて、コービーは自身の引退についてどう思ったのだろうか? あれだけ高いレベルでプレイできていることや、ジョーダンが引退後10年経っても、まだ現役に戻りたい気持ちを抑えられないことを知って、自らの引退を先延ばしにしようとは思わないのだろうか?

 コービーは、その質問には直接答えず、こう語った。

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