【NBA】デュラントの「テニクカルファウル増加」は良い兆候? (2ページ目)

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

 また、デュラントの変化は「テクニカルファウルの増加」だけではない。ときには、相手に噛みつかんばかりの表情で勝負を挑み、チームメイトに対しても誰かがディフェンスのローテーションを忘れたら、真剣に怒りを露(あらわ)にしている。「温和でいい人」として知られるデュラントからの『脱却』である。

 事実、デュラントはシーズン前に自ら「脱いい人宣言」をしていた。昨季、目の前で優勝を逃した経験を経て、今シーズンはどんな変化を目指すのかと聞かれると、「これまでより少しフィジカルに、そしてこれまでより少し意地悪く」と言ったのだ。

 昨季のNBAファイナルでマイアミ・ヒートに敗れたことは、若いデュラントにとって悔しい経験だった。ヒートを超え、すべての敵を倒して優勝するために必要なことは、何でもやろうと決意した。ひとつ分かったことは、優勝するためにはチームメイト全員の力が必要で、チーム全体として進化しなければならないということ。そのためには、リーダーとして周りの選手たちを叱咤激励し、引っ張っていく必要があると思ったのだ。ほとんどのメンバーが何年も一緒にプレイし、気心の知れた仲間だということも、デュラントの変化を後押ししたのだろう。

 今シーズンの開幕前、サンダーは中心選手のひとりだったジェームス・ハーデン(現ヒューストン・ロケッツ)をトレードで放出した。高騰するサラリーを抑えるための経営的判断だったが、このトレードによってチーム力は落ちるだろうと、多くの関係者は予想した。しかしフタを開けてみれば、昨季とまったく変わらぬペースで勝ち星を積み重ね、現在、ウェスタン・カンファレンスの首位を争っている。デュラントいわく、「それはチーム全体で進歩し続けるから」なのだという。

「ハーデンがいなくなっても、僕らはとてもいいチームなんだ。全員が全員を信じているからね」

 リーダーとして責任感の芽生えたケビン・デュラント。サンダーをNBAの頂点に導くため、今日も感情を前面に出しながら、チームメイトを鼓舞し続けている。

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