【NBA】デリック・ローズ抜きでもブルズはなぜ強い?

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

エネルギッシュなプレイでチームを牽引し、「ブルズの魂」と賞賛されるジョアキム・ノアエネルギッシュなプレイでチームを牽引し、「ブルズの魂」と賞賛されるジョアキム・ノア シカゴ・ブルズのジョアキム・ノアは、敵地でのブーイングが「大好物」なのだという。

「ブーイングから発せられる、あのエネルギーが好きなんだ。嫌われることで、さらに気力が沸いてくる」とノアは語る。

 父は1983年に全仏オープンを制した元プロテニス選手のヤニック・ノアで、祖父はカメルーンの元プロサッカー選手。一方、母はかつてミス・スウェーデンに選ばれたモデルで、現在は積極的に活動を広げる彫刻家。ノアはそんな両親から、秀でた運動能力と、自由人としての生き方を受け継いだ。

 12歳からフロリダ大学に入るまで6年間暮らしたニューヨークという街も、バスケ選手としての競争心と、自由溢れる好奇心を育(はぐく)んでくれたという。そんな環境で育ったコート上のノアは、常にエネルギッシュだ。

「自分は才能のある選手ではないから、(自分の中から)エネルギーを持ってくる必要があるんだ。他の人が自分のことをどう思うかは、まったく気にしない」

 ノアの言葉は、実にストレートだ。たしかにノアのスキルは、洗練されているとは言いがたい。しかしコート上でのエネルギーは、誰にも負けてはいない。オフェンスのエースというわけでもなく、ベテランでもないノアが、周囲から「ブルズの魂」的な存在として認められるようになったのは、そのためだ。

 ブルズに入団して4シーズン目の2010年。ノアがそこで出会ったのが、オールドスクール(昔ながらの考え方を持つ)タイプのヘッドコーチ、トム・シボドーだ。一見、水と油のような対照的なふたり。実際、シボドーはコート上で時折ふざけるノアが好きではなく、ノアもシボドーの厳しいコーチングに我慢できず、口ごたえしてしまうことがある。

 それでも両者がうまくやっているのは、ふたりの目標が「チームの勝利」という根っこの部分で一致しているからだ。お互いが「そのための努力は惜しまない」と考えているからこそ、ブルズは好調をキープしている。

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