【NBA】スター不在のグリズリーズが、なぜレイカーズより強いのか?
センターのマーク・ガソル(左)とポイントガードのマイク・コンリー(右)。スター選手ではないが、チームに欠かせない存在だ サンアントニオ・スパーズ(36勝11敗)、オクラホマシティ・サンダー(34勝11敗)、そしてロサンゼルス・クリッパーズ(33勝13敗)の3チームが「勝率7割以上」という、ハイレベルな首位争いを演じている今年のウェスタン・カンファレンス。その三つ巴の後方で、着実に勝ち星を積み重ねているのが、4位のメンフィス・グリズリーズ(28勝15敗)だ。スター選手がいるわけでもないのに、なぜ安定した成績を残せているのか。今回の『佐古賢一のカットインNBA』では、成長著しいグリズリーズについて話を聞いた。
今年のグリズリーズは昨年に引き続き、非常にいいですね。たしかにこのチームには、スーパースターがいるわけではありません。しかし、選手全員が一致団結して勝利を目指しているように感じます。チームが若いからこそ(1995年に創設)、選手たちは「自分たちで歴史を作ろう」という意識で戦っているのではないでしょうか。
その意識の高さを感じるのが、ディフェンスです。試合を見ていても、グリズリーズの選手たちは毎試合、ものすごく頑張ってディフェンスをしています。数年前までのグリズリーズは、選手個人の能力に頼ったディフェンスをしていました。しかし、最近は違います。非常にシステマチックに選手同士が協力し合い、安定したディフェンスでチームを勝利に導いているのです。このように変化したのは、ここ2~3年ではないでしょうか。おそらく、2009年からグリズリーズを率いているライオネル・ホリンズHCのフィロソフィー(哲学)が、ようやく浸透してきたからだと思います。
ただ、今のグリズリーズには、まだ優勝できるだけの力はありません。それはディフェンスに重きを置いた結果、ここぞというときに得点を奪えないからです。そのことは首脳陣も十分に理解していることでしょう。そのジレンマを抱えていたからこそ、グリズリーズは今回、大きなトレード(※)に踏み切ったのだと思います。
(※)グリズリーズは1月22日、選手3名をクリーブランド・キャバリアーズに放出し、見返りにフォワードのジョン・ルーアーを獲得した。目的は経費の削減。今回のトレードで600万ドル(約5億3000万円)のサラリーをカットし、400万ドル(約3億5000万円)のラグジュアリー・タックス(年俸総額超過に伴う課徴金)を回避した。
ポイントガードのマイク・コンリー、シューティングガードのトニー・アレン、スモールフォワードのルディ・ゲイ、パワーフォワードのザック・ランドルフ、そしてセンターのマーク・ガソル。今、スターターとして出場している5人は、プレイオフで十分戦えるほどの選手に育ちました。第8シードで5年ぶりにプレイオフに進出した2011年には、第1シードのスパーズを破るというアップセットを演じ、2012年も第4シードという高い順位でポストシーズンに進んでいます(第5シードのクリッパーズと対戦し、3勝4敗で敗退)。しかしNBAの頂点に立つためには、もう一歩、何かが足りません。今回のトレードで年俸総額をサラリーキャップ内に抑えたということは、最後の勝負に出る前兆ではないでしょうか。資金を確保したことで、早ければトレード期限の今年2月下旬、遅くても来シーズンには大型の補強かトレードを敢行すると思います。
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著者プロフィール
佐古賢一 (さこ・けんいち)
1970年7月17日生まれ、神奈川県出身。179cm/ポイントガード。北陸高→中央大→いすゞ自動車→アイシン精機。日本を代表する司令塔として活躍し、『ミスターバスケットボール』と呼ばれる。的確な判断力と要所の得点力で、JBLリーグ優勝9回、全日本選手権優勝12回を果たす。2011年に現役引退。
WOWOW(http://www.wowow.co.jp/sports/nba/)でNBA解説など活躍の場を広げている。現在はJBA理事ナショナル男子を担当。近況はコチラ