【NBA】『勝利の匂い』を嗅ぎつけられるベテラン選手の価値 (2ページ目)

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi
  • photo by AFLO

「優勝を経験したマブスは勝負どころを心得ている」と語る佐古氏「優勝を経験したマブスは勝負どころを心得ている」と語る佐古氏 その点でも、昨年優勝したダラス・マーベリックスは、やっぱり安定しています。優勝経験者の多くが残っているのは、チームにとって相当な財産です。ジェイソン・キッド(38歳)、ダーク・ノビツキー(33歳)、ジェイソン・テリー(34歳)......。一歩一歩、前進していくことが優勝につながることを、全員が理解しています。急激にステップアップしようと試みて、自分たちのバスケットスタイルを壊そうとする選手もいません。開幕当初は「優勝は厳しいかな」と思っていたのですが、最近のゲーム巧者なシーンを見ると、やっぱりベテランぞろいのマブスは強い。

 あと、個人的に大好きなフェニックス・サンズのスティーブ・ナッシュ(38歳)も、ベテランらしい味わいを感じさせてくれる選手です。注目は、彼の『ドリブル』です。普通の選手はドリブルで進んでいるとき、自然と身体の前でボールをつくものですが、ナッシュは止まっているときも、前進しているときも、足もとで細かくドリブルをついているのです。つまり、ナッシュは身体の近くでドリブルすることで、常に『いつでもパスを出せる状態』を保っているのでしょう。

 ナッシュは「誰のためにドリブルしているのか」ということを、いつも考えてプレイしている非常にクレバーな選手だと思います。このようなドリブルを実践しているのは、現役NBAプレイヤーのなかでも、ナッシュだけではないでしょうか。ドリブルでアングルを変えながらパスコースを広げるプレイは、相手にとって非常にディフェンスしづらいものです。また、味方にも「動けばパスが来る」という信頼感が芽生えますので、攻撃にプラスアルファが生まれます。ナッシュのドリブルは、勝つために創り出された『独自の技術』ではないでしょうか。派手なプレイではないのですが、僕はこういうところにベテランらしい味わいを感じます。

 コートサイドで若手にアドバイスを与えたり、試合の流れを読んで周囲を引き立たせたり、ベテランの存在価値は、決して目立つプレイだけではありません。しかし、そういう些細な積み重ねが、優勝への一番の近道だと、彼らは知っています。長いレギュラーシーズンで順調に勝利を重ねていくチームには、『勝利の匂い』を嗅ぎつけることのできるベテランが必ずいるのです。

取材協力:WOWOW
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プロフィール

  • 佐古賢一

    佐古賢一 (さこ・けんいち)

    1970年7月17日生まれ、神奈川県出身。179cm/ポイントガード。北陸高→中央大→いすゞ自動車→アイシン精機。日本を代表する司令塔として活躍し、『ミスターバスケットボール』と呼ばれる。的確な判断力と要所の得点力で、JBLリーグ優勝9回、全日本選手権優勝12回を果たす。2011年に現役引退。
    WOWOW(http://www.wowow.co.jp/sports/nba/)でNBA解説など活躍の場を広げている。現在はJBA理事ナショナル男子を担当。近況はコチラ

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