【F1】角田裕毅が「ビリ同然」のクルマで9位までジャンプアップ スタートで魅せた驚異の集中力
F1第23戦カタールGPレビュー(前編)
「長いレースでした。できるかぎりのことはやったと思いますけど、ただただ、ペースが遅すぎたっていう感じですね」
悔しさを通り越して思わず苦笑いしてしまうほど、カタールGPのVCARB 01は速さが足りなかった。
角田裕毅がスタートダッシュで予選14位から9位へ photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る 角田裕毅(RB)は予選で14位に沈み、その時点である程度、覚悟していたことではあった。
「クリーンなラップで、僕のアタックとしてはある程度出しきれたと思いますけど、残念ながら(マシンの)純粋なペースが足りなかったと思います」
ドライバーの腕でアタックラップをまとめ、なんとかQ1を突破して14番グリッドを手にしたとはいえ、Q1落ちとの差はわずか0.026秒。18位まで0.078秒の差しかなかった。
マシンの実力でいえば9番手。それも8番手のキック・ザウバーに0.270秒もの差をつけられ、2台Q1敗退で最下位のウイリアムズとは0.026秒の差しかなく、ルサイル・インターナショナル・サーキットにおいては実質的にビリ同然のクルマだったのだ。
スプリントレースでは、トレイン状態で身動きができないまま19周が終わってしまっただけに、決勝でも何かがなければ大きくポジションを上げるのは難しいこともわかっていた。
そういう意味では、スタートが唯一にして最大のチャンスだった。
レース前、角田はこう語っていた。
「ポイント獲得は難しいと思いますし、どこまで挽回できるかわかりませんけど、スタートが逆転のチャンスになるかなと思うので、できるだけポジションを上げて、最後まであきらめずにやれるだけのことはやりたいと思います」
その言葉どおり、角田はスタートで魅せた。
不利なオフラインのグリッドながら、発進加速で周冠宇(ジョウ・グアンユー/キック・ザウバー)の前に出て、ターン1はアウトへ。それによってインを取ったターン2で、挙動を乱して失速したピエール・ガスリー(アルピーヌ)とバルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)をパス。さらに追い風のターン5ではケビン・マグヌッセン(ハース)がコースオフを喫して、角田はコーナー5つで10位までポジションを上げてみせた。
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著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。