【F1】角田裕毅が自己ベスト連発で9位死守 限界ギリギリのドライビングにライバルも賞賛
F1第22戦ラスベガスGPレビュー(後編)
ショーアップされたセレモニーとアメリカ国歌演奏のあとに迎えたラスベガスGP決勝で、角田裕毅(RB)は堅実なスタートを決めた。
マクラーレン勢に挟まれながらも同等の走りを見せ、最初のピットストップでは同時に入ったピエール・ガスリー(アルピーヌ)をわずかに抑えて、中団トップの座を掴み獲った。
入念なセットアップ変更の甲斐あって、タイヤのコンディションは上々だった。
角田裕毅はラスベガスで誰よりも輝きを放っていた photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る しかし、戦略面ではハースのほうが一枚上手だ。ニコ・ヒュルケンベルグはミディアムタイヤに苦しみながらも第1スティントを4周長く引っ張り、そこからはレース全体にわたって角田よりも4周フレッシュなタイヤで走るというアドバンテージを創り出した。
その背後には、僚友ケビン・マグヌッセンが角田やガスリーらピットストップ組を抑え込んでタイムロスさせる、というチームプレーもあった。
レースペースに優るヒュルケンベルグを1秒うしろに抱え、角田は懸命に抑え込み続けた。コンストラクターズランキング6位を争う相手だけに、負けられない。
1.9kmのバックストレートエンドでは2度にわたって仕掛けられたものの、インを守って必死のレイトブレーキングでポジションを守る。ロックアップをしてしまえばタイヤは壊れ、その時点でレースを失ってしまう。その限界ギリギリを攻めたドライビングだった。
だが44周目、残り6周で力尽きた。ヒュルケンベルグに抜かれ、8位を奪われた。
それでもまだ背後には、レッドブルに乗るセルジオ・ペレス、レース巧者フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)が秒差で控えている。少しでも気を抜けば、入賞すらできなくなってしまう。
角田は最後の力を振り絞って自己ベスト連発の走りを続け、50周目までペレスを抑え込み続け、9位でフィニッシュを果たした。
「悔しいです」
開口一番、レースを終えた直後の角田が言ったのは、入賞できたうれしさよりも、ヒュルケンベルグに先行を許した悔しさのほうだった。
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著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。