角田裕毅は要望が多い? ホンダF1の現場責任者が明かす天才たちのすごみ (3ページ目)
【ニューウェイと浅木泰昭の共通点】
ーー今シーズン前半までレッドブルの最高技術責任者を務めていたデザイナーのエイドリアン・ニューウェイの印象は?
私は直接仕事をしていないのですが、一緒に働いていたエンジニアと話していると、ニューウェイさんは「マシンをこうしろ」と直接、指摘してくるわけではなかったようです。でもマシン開発の方向性について話し合いがあった時に、議論のなかで肝を見つけて、最終的に方向性を決めてくれるのが彼だった、と。
なおかつニューウェイさんが「こうしよう」と言うと、みんなが納得して同じ方向に向かって進んでいくというのです。道しるべになる人だと言っていましたね。
ーーニューウェイは2025年の春からアストンマーティンに移籍しますが、ホンダも2026年からアストンマーティンにPUを供給することが決まり、再び一緒に仕事をすることになります。
楽しみですね。きっとニューウェイは、ホンダで言えば、2018年シーズンからPUの開発責任者に就任した浅木泰昭さん(※2023年春に定年退職)のような存在かもしれません。マクラーレンと組んでスタートした第4期の最初3年間(2015〜17年)は低迷が続きました。その頃もホンダとしてはいろいろな"タマ"を投入していましたが、各部署の目指す方向性が異なっており、開発チームのベクトルが合っていなかった。
でも浅木さんが就任して競争力を上げるために肝になるのはこれだと決めて、開発チームを導いてくれ、最終的にタイトル獲得ができました。「こっちの方向を行こうぜ!」と決断してくれる人がいると、開発が大きく進んでいきます。きっとニューウェイさんはそれぐらいチームにとって大きな存在だと思います。
【プロフィール】
折原伸太郎 おりはら・しんたろう
1977年、東京生まれ。ホンダF1第2期活動(1983〜1992年)でのマクラーレン・ホンダの活躍を目の当たりにしてF1の世界に憧れ、大阪市立大学工学部機械工学科で学び、2003年にホンダ入社。市販車用エンジンの開発に携わったあと、ホンダ第4期F1プロジェクトに参画。イギリスの前線基地の立ち上げ、国内でのパワーユニット開発にあたり、2023年からトラックサイドゼネラルマネージャーを務める。
著者プロフィール
熱田 護 (あつた・まもる)
フォトグラファー。1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。取材500戦を超える日本を代表するF1カメラマンのひとり。
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