松下信治が後輩・角田裕毅にあえて厳しい言葉。「トップで花を咲かせるには圧倒的な武器が必要」 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【F1挑戦はあきらめていない】

 そして2022年は、FIA F2初年度ながら2回のポールポジションと2勝を挙げてランキング5位に入った岩佐歩夢に対しても、松下は高く評価する。

「歩夢はね、すごいと思っています。彼はやばい。速さがどうとかじゃなく、見た目もそうだけど、何よりメンタルが『おっさん』なんですよ、いい意味で(笑)。

 自分が同じ年齢でF2を戦っていた時のことを振り返ってみても、歩夢は本当に周りがよく見えています。だから、自分がどう行動すればいいかもよくわかっている。でも僕は一切、褒めません。歩夢にはここから先を期待しているし、ここで褒めるようなドライバーじゃないんで。

 先輩として声をかけるとしたら、今しかないから常に自分を追い込んでもらいたいし、裕毅にも歩夢にも『もっと前を見ろ』と。これからも厳しい言葉を投げかけ続けたいと思っています。

 今年スーパーライセンスが獲れなかったのは残念だけど、仮に今年獲れたとしてもシートに空きはなかった。F1に行った時にある程度の経験値があったほうが絶対にいいので、あんまり早く行きすぎても意味がないと思うんですよね」

 そして松下自身も、まだF1への挑戦をあきらめてはいない。

 かつてF2でのチームメイトは、ストフェル・バンドーン(2017年〜2018年マクラーレン)、セルゲイ・シロトキン(2018年ウイリアムズ)、アレクサンダー・アルボン(2019年〜2020年トロロッソ→レッドブル、2022年〜ウイリアムズ)、フェリペ・ドルゴビッチ(2023年アストンマーティン)と、ほぼ全員がF1への切符を手にしている。

 彼らとの実力差を考えても「正直言って、彼らがやっていることが超人的な領域だとはまったく思っていない」と言いきれるからだ。

「僕は日本に戻ってきて、日本で結果を残さないことには何も言えないので、まずは日本でチャンピオンを獲らなければいけないと思っています。(年齢的に)いつまでもシングルシーターに乗れるわけではないこともわかっているので、2023年はものすごく勝負の年になると思っています。

 スーパーフォーミュラで勝つのもすごく難しいことだけど、自分にはそれができる能力が備わっていると信じている。なので、それを言葉で言うだけでなく、結果で証明したいと強く思っています。

 僕のなかでF1は、常に一番大きな存在。F1でもケビン・マグヌッセン(ハース)やニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)が帰ってきたり、ニック・デ・フリース(アルファタウリ)がデビューのチャンスを掴んだりという事例もある。やっぱりあきらめたくない。

 本当にそう思えなくなったらあきらめるしかないけど、いまだにそう思えているということは、チャンスがゼロではない。そうやって今、自分を追い込んでいます」

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