松下信治が後輩・角田裕毅にあえて厳しい言葉。「トップで花を咲かせるには圧倒的な武器が必要」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【角田の成長にリスペクト】

「裕毅も一発の速さはあると思うけど、強いて挙げるなら、予選でライバルを圧倒する速さは大きいですよね。予選が速ければドライバーとして認められるし、(一流と認める)理由になるような顕著な差を作るのはすごく大事だと思います。

 バトルがメチャクチャ強いとか、タイヤマネジメントがうまいとか、ドライバーの能力として上げられるいくつかの要素のうち、今の裕毅がどこか圧倒的に秀でているかというと、今のところはそうでないように見えます。そういう圧倒的な武器みたいなものがあると、次が見えてくるのかなという気がします」

 現地で取材していてはっきりと感じられたのは、2年目の角田が精神的に大きく成長したことだった。特にガスリー離脱が確定的になってきたシーズン後半戦に入ってからは、さらなる学習と成長への意識が強まり、日本GPで大歓声を浴びたことでも、またひと回り大きくなった。

「それは単純に一度経験したことが増えてきて、たとえば苛立つようなことが起きても、一度経験していれば二度目は『これはこないだムカついたのと同じだな』って捉えられ、いちいちイライラしなくても済むようになるから、驚いたり取り乱したりもしない。それが経験というもので、裕毅にとっても2年目はそういう成長がたくさん見られたんだと思います。

『追いかけるお兄ちゃん』がいる立場から、『これからはコイツには負けられない』という立場になるから、それによってどんどん意識が変わってきているんだと思います。鈴鹿でもすごく丁寧にファンサービスをしていたし、責任感のようなものがすごく見えましたね。

 それは、僕が到達したことのない領域だと思います。それを見て『ステージが男を作る』というのもはっきりと感じた。そこにいる裕毅に対してリスペクトの念を持ちます。本当に人ってステージによって変わるし、それを乗り越えられる力があるかどうかが大切なんだと思います」

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