「F1ドライバーってすごいな」「2022年を象徴するスピンオフ」。現役ドライバー松下信治の目に映ったF1新時代 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【鈴鹿で日本人が戦う姿に感銘】

 特にそれを肌身で感じたのが、3年ぶりに開催された日本GPだった。現地に足を運んだ松下は、鈴鹿の熱狂ぶりに驚いたという。

「正直ビックリしました。鈴鹿は毎年行っているんですけど、ここ数年で一番お客さんがたくさん入っていたし、女子とか子どもや若い人も多くて、今までとは雰囲気が全然違いましたね。

 角田裕毅(アルファタウリ)が日本人として戦う姿を、僕があの立場だったらどうだったんだろうと想像しながら見たりして、そういう意味では普通のグランプリとは見方が違っていました。もちろん僕はF1ドライバーではないんだけど、裕毅が声援を受けている姿を見て『あぁ、やっぱりF1ドライバーってすごいな』って思ったり。

 それと、岸田首相が見にいらっしゃったというのも、僕的には大きいかったですね。F1って海外では大統領や首相が隣席するイベントなのに、日本だけは今まで全然だったのが、今回のことでモータースポーツの社会的地位が上がったなという感じがしました」

 それは日本で走る現役ドライバーとしても、いい刺激になったと松下は言う。

「鈴鹿に大勢いたF1ファンの人たちは、我々の(国内の)レースにはまったく来てくれていないわけで、この人たちはふだんどこにいるんだろうって不思議にも思いました(苦笑)。F1を見て『レースって面白いな』って思って、SFにも足を運んでくれるようになればいいなって思うんですけど。そこはドライバーとして危機感を感じています。

 何人のお客さんを会場に呼べるかっていうのは、ひとりのアスリートとしての価値でもある。そういうこと(ファンサービス)に興味のないドライバーもいて、自分も含めてF1ドライバーに比べてファンの数は全然少ないわけだから、僕らは危機感を持たなきゃいけないと思うんです。JRP(SFを主催する日本レースプロモーション)だけじゃなくドライバーにも責任があると思っています」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る