フェルスタッペンが再び「F1界のルール」を破ってペナルティ。なぜ同じ過ちを繰り返すのか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【フェルスタッペンに「戦略的に譲れ」の指示】

 後方の多重クラッシュで再び赤旗が提示され、その間にハミルトンにポジションを譲り返しての再スタート。ここでもフェルスタッペンは強引にインに飛び込んで前に出て、首位に躍り出た。

 しかし、純粋なペースではハミルトンのほうが速く、1秒差でプレッシャーをかけ続けてくる。スタートの蹴り出しを優先してミディアムタイヤを履いたことが、周回が進むにつれて重荷になってくる。

 37周目のターン1で、ハミルトンがDRS(※)を使ってアウトから前に出る。だが、フェルスタッペンは異様なレイトブレーキングで挙動を乱しながらインに飛び込び、ハミルトンを道連れにしながらランオフエリアへと飛び出していく。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 レースコントロールからは、ポジションを戻すか、さもなくばスチュワードに審議対象とすべく伝達するという通常どおりの連絡が来たため、チームはフェルスタッペンにポジションを譲るよう指示。ただし「戦略的に譲れ」という指示だった。

 最終コーナーの入り口には、メインストレートでDRSを使うための検知ポイントがある。一度はポジションを譲っても、ここでハミルトンの1秒以内にいればメインストレートでDRSを使って抜き返すことができるという「戦略」だ。

 フェルスタッペンはじわりとスロットルを戻して270km/hまで速度を落とすが、それがわかっているからこそ、ハミルトンもターン27の手前では抜かない。ここで先行させてもらっても次のDRSで抜かれるなら、実質的に譲られていないのと同じことになるからだ。

 ハミルトンはフェルスタッペンの背後についたが、抜かない。焦れたフェルスタッペンは、レーシングライン上でブレーキングをして8速から3速まで急減速。これに驚いたハミルトンは咄嗟に左へとステアリングを切って激しい追突は回避したものの、フロントウイング翼端板を壊してしまった。

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