アロンソ「GP2!」発言の真相。復帰1年目のホンダは駆け引きの術を知らなかった (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 では、マシン性能では彼らよりも劣るはずのザウバーに、序盤6周目に易々と抜かれたのはなぜか?

 それは、ザウバーが搭載するフェラーリ製パワーユニットに比べて、ERSのディプロイメントが大幅に劣っていたからだ。120kW(約160馬力)のディプロイが切れれば、簡単に抜かれてしまうのは当然だ。

 当時の新井康久総責任者はこう語っていた。

「今回持ち込んだスペックは、ルノーよりも10馬力多く出ているんです。ドライバビリティはウチのほうが圧倒的にいいはずです。ICEだけはちゃんと出力が出ています。ただしディプロイが切れれば、そんな10馬力や20馬力のICEの差はどっかにいってしまいますから......」

 ホンダRA615HのMGU-H(※)は、サイズゼロコンセプトに合わせてエンジンVバンク内のスペースに収めるべく、コンパクトに設計されていた。それゆえに回生量が乏しく、連続周回で戦う決勝ではディプロイメント量が圧倒的に足りなかった。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 前年度2014年のレベルで言えば、平均的なディプロイメント量だった。だが、ルノー以外のメルセデスAMGのフェラーリは2年目の2015年はディプロイメント量を大きく進歩させてきていたため、マクラーレン・ホンダの目標値設定が誤っていたのだ。

 アロンソの言う「GP2エンジン」は、マクラーレンとホンダがチームの総意として選んだものだ(それも正確に言えばGP2エンジンではなくGP2ディプロイメントということになる)。

 そして、MGU-H拡大にはVバンクの外に出すレイアウト変更が必要であり、トークン制に縛られた2015年シーズン中にそれを行なうことは不可能だった。つまり、マクラーレン・ホンダはディプロイメント量の乏しさを抱えたままで戦わざるを得なかったのだ。

 そんななかでもホンダはICEを改良し、最大パワーの改善を図ってきた。だから鈴鹿でもルノーPU勢を上回る最高速を記録し、ディプロイメント量が問題にならない予選ではQ3進出まであと0.5秒のところまで来た。

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