レッドブル・ホンダを救った「恵みの雨」と「正しい決断」。濡れた路面でピカイチの速さを見せた (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 ペナルティを消化したにもかかわらず(ハミルトンに対して)たったひとつポジションを失っただけだから、間違いなく悪くない結果だったね。今朝の段階ではこんな結果になるなんて、まったく想像もしていなかったよ」

 路面が乾いていく予選で速さを見せ、レースでも大半をリードしたのはノリスだった。しかし、突然の雨に巧みな対処をしてみせたのはハミルトンやフェルスタッペンといったトップドライバーたちであり、総合力で一枚も二枚も上手であることを見せつけた。大荒れの展開のなかで上位に食い込んだ顔ぶれを見ても、ドライバーの腕と経験がモノを言ったことは間違いなかった。

 ルーキーの角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)にとっては、極めて厳しいロシアGPとなった。

 金曜はステップバイステップのアプローチで、同僚ピエール・ガスリーとの差を意識しすぎることなく習熟に集中した。だが、モンツァとは真逆のダウンフォースを削る方向性のセットアップではマシン挙動が定まらず、ガスリーでさえ「速いけど走りにくい」と手を焼くほどだった。

 雨の予選では新品タイヤに交換するタイミングをうまく判断し、ガスリーに次ぐ13位。しかし金曜からのセットアップ変更を土曜のドライコンディションで確認できないまま臨んだ決勝スタートでは、リアの不安定さに自信を持ってドライブすることができず、1周目に次々と抜かれて最後尾まで落ちてしまった。

 ハースのニキータ・マゼピンを先頭とするDRSトレインの4台目で抜け出せず、中団グループからは大きく遅れてしまった。ただ、早めのピットストップでこれをクリアしたあとは、中団グループと同等かそれ以上のペースで走れており、決して速さがなかったわけではない。

 その速さがあったからこそ、チームは大幅に後方ポジションにいて失うもののない角田には、ソフトタイヤに賭けるギャンブルを採らせた。

 雨脚が強まったために失敗に終わったが、もし2、3周で雨が止んで予選Q3のように路面が急速に乾いていけば、ひとりだけ圧倒的なペースで走って大きくポジションを上げた可能性もあった。逆にいえば、そうでもしなければ入賞のチャンスはなかったのだから、ギャンブルをする価値はあった。

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